ショパンコンクール予備予選 雑感

今年はショパンコンクールが開催される年。
4月下旬から「予備予選」が開催され、これを通過したコンテスタントが10月に行われる本大会に進むのですが、この予備予選もYouTubeのショパンコンクール・チャンネルで公開されており、かなりの部分を視聴しました。

ちょうどGWと重なった日程だったので、旅行や会食などの合間を縫っての視聴でした(大半スマホ)。しかし、もしこれらの行事がなかったら、ひたすらTVの前に座り、審査員よろしく日がな一日見続けていたことでしょう。ショパコン廃人(笑)。そうならずに済んだのは良かったのですが、本当は時間があればひとりひとりチェックしながら聴きたいところでした。とりあえず、これはもう少し先の老後の楽しみにしておきます。

この予備予選では、ショパン作品の中から決められた課題曲(エチュードから2曲、ノクターン、マズルカ、スケルツォから各1曲ずつ:本当はもっと細かい規定があります)をコンテスタントが選択し、約30分で演奏するのですが、当然同じ曲を何度も聴くことになるわけです。ノクターン ハ短調、スケルツォ変ロ短調などは何度聴いたことか!なのですが、いやー、何度聴いてもいいですね~。やっぱりショパン大好き!永遠に聴いていられる。

それに何といっても、当たり前だけど、皆さん上手い!
大半の方が既にピアニストとして活動されていて、かなり著名な方も出場されており、テクニックがどうとかいうレベルは遥かに超えている。それに、前回よりもレベルアップしていると感じました。

今回の予備予選の出場者は171名。ここに選ばれること自体が大変なことだそうですが——それにしてもアジア系がなんと多いこと。特に中国が多く、64名。そして国籍は欧米であるものの中華系の方もいて(前回優勝のブルース・リウ氏もカナダ国籍)、それらを合わせるとざっくり集計で75%がアジア系(トルコ、ウズベキスタン等判断がつかない国は除外しています)。ヨーロッパでは、何時間も苛酷な練習に取り組む文化がなくなりつつある、とどこかで読んだ記憶があります。文化が進み過ぎると頑張らなくなってしまうのでしょうか?ともあれ、この傾向は今後も続いていくのでしょう。

と、さて——審査結果は既に発表されており、予備予選通過者と予備予選免除者(指定コンクール上位入賞者)合わせて85名が本大会に出場するのですが——

気になったことのひとつとして、韓国の通過者が少ないこと。19名に対し、通過者2名(これに免除者が加わり本大会出場は3名)。ほぼ2分の1の確率であるはずなのですが。すべてを聴いたわけではないものの、素晴らしいと感じた方(Juhee Lim氏が特に印象的でした)も通過していなくて——これもコンクールの厳しい現実なのでしょうか。それにしても——チョ・ソンジンの国なのに!?などと思ってしまいます。

我が国日本は23名中10名が通過——中でも私が(界隈でも同様の意見ですが)ずば抜けている、と感じたのは、中川優芽花さん。既にクララ・ハスキルなどで優勝されているのですが、打鍵テクニックの引き出しが数多くあって、その中から最適なものを選び出して演奏している、と感じました。そのセンス、そしてそれらを土台にした表現力が素晴らしい。1曲目のノクターンから柔らかなレガートに惹き込まれてしまいました。また、他の女性コンテスタントの衣裳がほぼドレスであるのに対し、彼女は黒の襟付きシャツに黒パンツ。「今日はコンクールを受けに来ました」の感で、サッパリキッパリした佇まいも好感度大。このまま順調に行けばファイナリストは間違いない、と思っています。そしてファイナルの暁には、協奏曲1番ではなく、2番を弾くのでは?などと勝手に推測(当たったら褒めてください笑)。

それからもう一人、今年二十歳の島田隼さん。ホテルのベッドで寝落ちしかけで聴いていたのですが、彼の演奏が始まると、その鮮やかな音楽にハッと目が覚めました。透明度の高い確かな打鍵とダイナミズム。起き直って最初から視聴しました。他のコンテスタントの方々のお名前は、コンサートのチラシやSNSの情報などで一度ならず目にしていたのですが、島田さんはお名前を見るのも初めて。プロフィールを見たところ、早い段階からジュリアード音楽院で学ばれているとのこと。なので日本では見掛けなかったのですね。今後注目です。

ところで、今予選で使われていたピアノは2種類で、スタインウェイとヤマハ。スタインウェイが圧倒的に多かったのですが、ヤマハの方にショパンらしさを感じました。繊細で少しノスタルジックな音色。一方で、同じスタインウェイなのに弾き手によって音色が全く異なるのも興味深く——連続して異なるピアニストが登場するので、個人の音色の違いがよくわかるのです。これもコンクールの聴きどころのひとつかもしれません。

と、いろいろと思うまま雑に書き連ねましたが——10月の本大会、今度はポロネーズやバラードやプレリュードやソナタや舟歌が聴ける——誰を応援とか、日本人がー、とかもありますが、ショパンが山ほど聴けるのが何より嬉しい。楽しみです!

 

 

タイトルとURLをコピーしました