2024年7月31日(水)前田妃奈ヴァイオリン・リサイタル ピアノ久末航

19時開演 西神中央ホール

以前から聴いてみたかった前田妃奈さん、初めて訪れる西神中央ホールで聴いてきました。

賞歴や評判は前々から耳にしていましたが、いつだったかTVで室内楽の練習風景(学生仲間での?)を見たときに、身体全体に音楽が漲っている様子、ひとり際立つ存在感に心を掴まれ(そのときの彼女はオーバーオールを着ていて、そのファンキーな出で立ちも印象大でした)、この人の演奏をぜひ間近で聴いてみたい、と思っていたのです。

この9月にはセンチュリーの定期にも出演されますが、待ちきれない思いもあり、少々遠いですが西神中央まで出掛けることにしたのです。

曲目はグリーグのソナタ1番と3番、後半にフランクのソナタ。
この翌日に、高崎芸術劇場でグリーグの1番から3番までのソナタ全曲の録音を行う、とのことでしたが、リサイタルのプログラムとして、2番の代わりに「名曲」のフランクを入れたものと推測しました。

さて、その演奏は、やはり非常にエネルギッシュで生気に満ち、強い美しさがありました。推進力も抜群ですが、フランクのソナタの冒頭部分などのロマンティックな歌も素晴らしかった。もう全てを持っていて——チラシに「21歳」と謳われているのは、「まだ」21歳、と言いたいのでしょうが、しかし彼女はもっともっと前から完成されていたのではないでしょうか。

ピアノの久末航さん。実は久末さんも今回の目当てでした。大津市出身で、びわ湖ホールからの情報でその存在(天才少年)はかなり前から知りつつ、今まで聴く機会を逸していたのです。コアなピアノ・ファンからの評価も高く、いつか聴きたいと思っていましたが——いや、素晴らしかった。やはり音が美しい。繊細な歌心とヴィルトゥジティ。そしてその演奏にどっぷり浸れる安定感があるのです。それに鍵盤から指を離す際の手のフォームが美しい。これは「発見」でした。久末さんのリサイタルもまたぜひ聴きたいです。

妃奈さんの立ち位置は独特で、譜面台をピアノの鍵盤と平行に置き、久末さんのほぼ真横に立つのです。ここまでピアノに近いヴァイオリニストは初めて見ました。練習で合わせをしているような近さなのです。それゆえ、ピアノとの呼吸はぴったり。この辺りが個性というかセンスというか——ただものでない感があります。

素晴らしい才能。フォローしていきたい演奏家が一度に二人増えた夜でした。

 

◇アンコール
グリーグ:春に寄す(ヴァイオリン編曲版)

◇座席
L列下手通路側

◇その他
この西神中央ホールは最近できた「なでしこ芸術文化センター」の2階にある500席ほどのホール。まだ新しい匂いがしていたのですが、開館は2022年10月とのこと。三角形を立体的に組み合わせたデザインが外観にもインテリアにも(椅子の張地や手摺などにも)施してある斬新な意匠の建物。

残響はあまりないけれど、そこそこよい音響(京都府立アルティと似た感じ)。妃奈さんは「弾きやすい」と仰っていました。

と、しかし三宮から地下鉄で14駅(終点)、なかなかの果て感がありました。

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