19時開演 スカラ座
ツアー6日目、実質最終日。
この日は午前中にヴェルディ創設の「音楽家のための憩いの家」、サンタンブロージョ聖堂、サン・マルコ教会の見学。
昼食後の自由行動は、ミラノ大聖堂の見学とお土産ショッピング。ホテル帰着後は慌ててシャワーと帰国へ向けた荷造り、仮眠なし、と忙しい一日でした。
ツアー最後のオペラ鑑賞は、キリル・ペトレンコ指揮による「ばらの騎士」。最終日にふさわしい、座りのよさがある演目だったと思います。
ところで、このツアーは、イタリアオペラをドイツで、ドイツオペラをイタリアで鑑賞し、ベルリン・フィルとシュターツカペレ・ベルリンを聴くものの、各々そのシェフはスカラ座で聴く(ティーレマンは降板しましたが)という「あべこべ」な組み合わせ。そのことをこの日の昼食で隣になったツアー会社の奥様にお話したら「あら、そうですね!」(気づいてなかった?)と。ヨーロッパではさして珍しくもないのでしょうか。
さて、ばらの騎士。
このプロダクションも正統的なもので、舞台後方一面にウィーンの風景と思われるモノクロームの映像が映し出され、その遠近感と解像度が素晴らしく、センスある美しい舞台でした(このモノクローム映像の意味するところは「古き良き時代」であったのかもしれません)。
加えて、歌手のルックスがよい(といってもこれまでに見た公演は押しなべて皆高レベル。元々オペラはヨーロッパ発祥なので当然ですね)。
特にオックス男爵は背が高く脚が長くカッコいい!これでは物語の意味合いが変わるのでは?と思ってしまうカッコ良さでした。それからオクタヴィアン、華奢な美青年。「マリアンデル」の方が女装ではないかと思ってしまう演技力の高さ。美しく可憐なゾフィ―は声量も豊かで素晴らしかったです。
といっても、この日は字幕をまったく放棄し、主に音楽を聴くことに意識を置いて鑑賞していたのですが——そうやって没入することなく客観的に見てしまうと、この物語は「まったくもってどうでもいい話」に思えてくるので、これはよろしくなかったです。このオペラは「貴族社会の終焉」という時代の移り変わりの象徴として描かれている、ということを念頭に観なければ、なのですが、細かな歌詞の内容がわからない故に冗長にしか思えず——例えば、幕切れは、元帥夫人、オクタヴィアン、ゾフィーの三重唱で終わる方がスッキリするのではないか?元帥夫人が落としたハンカチを小姓が拾って幕切れ、とか?——などと考えながら観ておりました。
ペトレンコ氏のタクトによる音楽は、生き生きと推進性があって素晴らしかった——と言いたいのですが、オケの演奏が今一つ。第一幕の幕切れのソロヴァイオリンの音程が不安定でドッキリ、以降その耳で聴いてしまい、アラ探し。日本のオケの方が上手いのでは?と思ってしまいました。なお、途中で急に視界が開け、マエストロがよく見えるようになったのは幸いでした(皆さま撃沈)。
カーテンコールで最も喝采を浴びていたのは、歌手ではなくマエストロ。登場するなり、演目に因んで、舞台最寄りの上部バルコニー席から赤と白のバラが一輪ずつ大量に投げ込まれていました。ペトレンコ氏、ここでも大人気でした。
ということで、あまりオペラの感想は書けていないのですが、5日連続オペラ鑑賞も無事完遂しました。
(出演)
元帥夫人:Krassimira Stoyanova
オックス男爵:Gunther Groissbock
オクタヴィアン:Kate Linsey
ファーニナル:Michael Kraus
ゾフィ―:Sabine Devieihe
マリアンネ:Caroline Wenborne
アンニーナ:Tanja Ariane Baumgartner
警官:Bastian-Thomas Kohl
ファーニナルの執事:Jorg Schneider
歌手:Piero Pretti
指揮:Kirill Petrenko
演出:Harry Kupfer
◇座席
前から9列目の上手側
◇劇場内
この日やっと幕間にホワイエでドリンクを。
まず注文カウンターで支払いを済ませ、レシートを持って受け取りカウンターへ。どちらのカウンターも激混み。ホワイエも激混み。日本のホールとさして変わらず、もっと優雅な空間を期待していたので少々ガッカリ。Box席のセレブには別空間が用意されているのかもしれませんが。
◇観光
〈ヴェルディ 音楽家憩いの家〉
郊外かと思っていましたが、割と街なかにありました。中庭に面して、ヴェルディと2番目の妻でソプラノ歌手のジュゼッピーナ・ストレッポーニのお墓。現在でも55名の居住者がおられ、年齢は73歳~103歳。介護サポートもあるそうです。
説明ツアー中に、居住者で80代のテノール歌手の方が出て来られ、2曲歌ってくださいました。
パイプオルガン付き(リコルディ社寄贈)のホールがあり、毎週コンサートが催されているそうです(ちょっと臭かった)。
〈サンタンブロージョ聖堂〉
ミラノの守護聖人を祭る聖堂。ロマネスク様式。
〈サン・マルコ教会〉
ヴェルディのレクイエムが初演された教会。