2024年 振り返り

2024年も多くの演奏会に足を運びました。その数、全69公演。
1年の区切りとして、振り返っておきたいと思います。

今回は書き留めておきたいことが色々とあるので、項目ごとに多少ダラダラと連ねていきます。

◆その1:ベルリン・ミラノ旅行
やはり10月末のベルリン・ミラノ旅行での連日6公演。これは全体の印象からは切り離されている特別な体験でした。このまとめは別に記したいと思います(「前編」を書いたまま停滞しております)

◆その2:海外オーケストラ来日公演
日付順に、モンテカルロ、METオケ、ロンドン交響楽団、ミュンヘンフィル、ウィーンフィル、バイエルン放送響の6つのオケを観賞。演奏技術の高さはもとより、個々のプレイヤーの熱量の高さに日本のオケとの違いを感じました。「題名のない音楽会」放映時の出光興産のCM——”必要なのは天性の才能だろうか、恵まれた環境だろうか、それとも生まれ持った運だろうか・・私たちは、熱だと思う♪英雄ポロネーズ♪” ——ではないですが、聴き手の心を動かすのは、やはり「熱」なのではないか?そんなことを考えさせられました。

◆その3:ブルックナー生誕200年
2024年のトピックは何と言ってもこれ。
すべての交響曲の生鑑賞を目指しました。大フィル「0、1、2番ツィクルス」のおかげで、4番以外は制覇できました(4番はこの2月に尾高マエストロ/大フィルで聴きます)。
以下内訳
・0番:尾高忠明/大フィル
・1番:尾高忠明/大フィル
・2番:尾高忠明/大フィル
・3番:飯森範親/センチュリー
・5番:高関健/関フィル
・6番:尾高忠明/大フィル
・7番:井上道義/大フィル、
トーマス・ザンデルリンク/大響
・8番:トゥガン・ソヒエフ/ミュンヘンフィル
・9番:尾高忠明/大フィル、
サイモンラトル/バイエルン放送響

◆印象に残った演奏
魂を抜かれるような思いがした演奏や、奏者を「発見した」喜びなど、様々な感動がありました。その中でも特に印象に残っているものを聴いた順に以下に記します。

★1月12日 飯森範親/センチュリー定期
三浦文彰さんをソリストに迎えたショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番。快刀乱麻を断つがごとくのヴァイオリンのキレ。年の初めに聴きましたが、この1年でもっとも感銘を受けたヴァイオリンの演奏でした。

★4月19日 芦屋国際音楽祭
こちらもヴァイオリン。葵トリオの小川響子さんを「発見」。生き生きと音楽を導くその演奏にすっかり魅了されました。名古屋フィルのコンマスであり、N響のゲストコンマスをつとめられていたのも納得。まだ聴けていない葵トリオもいつか聴きたい、と思っています。

★5月25日 山田和樹/モンテカルロ・フィル 兵庫公演
明るい音色、表情豊かなオーケストラ。これまであまり好きではなかった「幻想交響曲」も演技巧者のマエストロとオケ奏者で目を見開かれる思いで鑑賞。また、藤田真央さんでベートーヴェン3番を聴くことができたのも幸運でした。しかし真央くん、もう日本では聴けないのでしょうか?この年のリサイタルはサントリーホールでの1回きりでした。もちろん行けてません(泣)

★6月9日 チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル 大阪公演
すべてが「美しい」という土台の上に構築されているピアニズム。ラヴェルとリストのプログラムでしたが、あまりの美しさに涙目で帰宅。心に深く残る公演でした。あらゆる楽曲を彼の演奏で、あの美音で聴いてみたい、と思ってしまうピアニスト。11月に再び聴けたのは幸せでした。

★7月20日 佐渡裕プロデュースオペラ「蝶々夫人」
栗山昌良氏演出プロダクションの再演。蝶々夫人の決定版ではないでしょうか。日本美にあふれた舞台。歌手も粒ぞろいで皆適役。歌唱はいうまでもなく、所作までもが美しい。プッチーニの世界を堪能しました。

★8月31日 いずみホールオペラ「真珠とり」
ビゼーの上演機会の少ないオペラを、日本を代表するオペラ歌手でのキャスティングで鑑賞。演奏会形式ではあるものの、ホールの設えを活かした舞台づくりも秀逸で、ビゼーの音楽とともに最高水準の歌唱に感動。

★11月8日 トゥガン・ソヒエフ/ミュンヘンフィル サントリー公演
ブルックナー8番を聴くためだけに東京へ日帰り(正確には半日帰り)。しかし行った甲斐がありました。南ドイツのゴージャスなサウンド、これが聴きたかった!と幸せを噛みしめる時間でした。惜しむらくは帰りの新幹線(終電)の時間が気になり、楽章間でソワソワ時計を見てしまったこと。

★11月24日 サー・サイモン・ラトル/バイエルン放送響 川崎公演
巨匠ラトルの導く分厚い音色のオーケストラ、ホールの響き、聴衆、すべてがこれ以上ないレベルで揃った公演。ブルックナー9番を全身で浴びる至福の体験。こういう公演に出会ってしまうのは幸福なのか不幸なのか?と考えてしまいます。6月に衝撃を受けたチョ・ソンジン氏でベートーヴェン2番を聴けたのも出来過ぎの感。今年のマイ・ベストはこの公演。

★12月7日 川瀬賢太郎/センチュリー 豊中名曲
務川慧悟さんのラヴェル協奏曲。初出しとは思えない十八番感。特に2楽章アダージョの椅子の背にもたれ掛かっての演奏は目に耳に焼き付いて離れません。務川さんは8月にリサイタルを聴きましたが、こちらの方がより印象に残っています。

挙げ出すとキリがないので、断腸の思いで?以上を厳選しました。
しかし、演奏会は生モノなので、そのときのコンディション、特にどのホールのどの位置で聴いたか、が満足度に大きくかかわっていることを痛感しました。

その意味で残念だったのが、山田和樹/モンテカルロ京都公演(ホールの響き)、ネゼ=セガン/MET兵庫公演(3階後ろで遠すぎた)、ネルソンス/ウィーンフィル大阪公演(フェスの3階はヴァイオリン(五嶋みどり)を聴くには遠すぎた)の3公演。世界レベルの公演を聴くなら、腹を括って良席を取るべき、その勇気がなければ断念する——この年の学びです。

さてしかし、今年2025年は、ベルリン・フィルはドゥダメルとペトレンコで2度来るし、ウィーン・フィルはティーレマンだし、コンセルト・ヘボウはマケラだし——量より質で勝負?それにしても円安どうにかしてください(祈)。

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