2025年10月5日(日) カフェ・モンタージュ「A.SCARLATTI」竹田舞音・菅沼起一・三橋桜子

17時開演 カフェ・モンタージュ

約1ヶ月振りのカフェ・モンタージュ。

イタリアのバロック期の作曲家、アレッサンドロ・スカルラッティ作品のソプラノ、リコーダー、チェンバロによる演奏会。

オケ定期登壇の翌日でもあり、予習を全くせずに出かけたのですが、正解でした。というのも、私が「スカルラッティ」と思い込んでいた、バッハ、ヘンデルと同い年の作曲家は、このアレッサンドロの息子のドメニコだったのです。

こちらパパ・スカルラッティは、シチリア島に生まれ、少年期にローマへ渡り音楽教育を受け、若くしてナポリの宮廷楽長となり(その後ローマや再びナポリでも活動)、多くのオペラやカンタータなどを作曲。今年が没後300年とのこと。

リコーダー菅沼さんによると、その後の音楽の成り立ちに多くの影響をもたらしたにも拘わらず、300年の記念の年なのに殆ど採り上げられていないことから、この演奏会を企画したとのことでした。一般的な知名度が高いとはいえない作曲家なので、カフェ・モンタージュで採り上げるのにはぴったりの作曲家、といえるかもしれません。

この演奏会に出向いた目的は、ソプラノ竹田舞音さん。昨年の日本音楽コンクールで優勝されて以降、実演を聴くのは初めてでしたが、その澄んだ声とよくコントロールされた歌唱は、リコーダーとチェンバロという素朴なアンサンブルとの相性もよく、会場の規模にもフィットして素晴らしいものでした。

リコーダーの菅沼さんとは、堀川音楽高校、東京芸術大学ともに同級生であったそうで、高校時代に竹田さんが歌われていたのを菅沼さんが聴いていた作品もプログラムに含まれていました。演奏会の企画というのは、そういった演奏家同士の繋がりから生まれるのですね。

リコーダーの音色は可愛らしく、平和、のどか、といった言葉が浮かびます。中世の人々の日常的な幸福、といったものを想像したりも。

このプログラムは菅沼さんの学者としての面を反映したものでもあり、原曲では、チェンバロの譜面には通奏低音しか書かれておらず、右手は奏者が即興でつけていた、という解説も交え、右手つきと通奏低音のみを続けて演奏してくださったのですが——鍵盤がよく見える位置に座っていたのでよく見えたのですが、通奏低音のみであっても右手も使われており、ちょっとよくわかりませんでした。「通奏低音」自体の勉強が必要、と思った次第です。

と、今回のカフェ・モンタージュ訪問は、一人で出掛けて誰とも話さず帰ってきた前回とは真逆で交流が主となりました。

実は、舞音さんのお父様で、関西二期会所属のテノール歌手、竹田昌弘さんは以前私と同じ会社に勤務されており、音楽繋がりで親しくさせていただいているのですが、この日は約1年振りにお会いして近況その他いろいろとお話しできた他、終演後は舞音さんも交えて一緒に写真を撮っていただいたりも。

また、オーナー高田さんの奥様とも2年振りにお話でき——奥様のほんわかとした雰囲気にはとてもしっくりくるものがあり、もっと親しくなりたいと思っています——この日の演奏に使われた高田さん所有のチェンバロについて教えていただいたり、と有意義なひとときでした。

蛇足になりますが——開演前に、隣に座る夫が「腕を蚊に刺された」と訴え、私もくるぶしあたりがかゆくなり、「蚊がいるのでは?」——と、蚊と思しき黒い点が浮遊しているのを発見、つい両手で「パチン」とやってしまったところ、なぜか客席から笑いが起き、会場全体にほわんとした一体感が生まれたように感じました(蚊の撃退には至らず)。この会場ならでは。小さな幸福感。

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