14時開演 びわ湖ホール 中ホール
今回の「びわ湖ホール オペラへの招待」は、ダブル・ビル。
滅多に上演されないモーツァルト「劇場支配人」と、「カヴァレリア・ルスティカーナ」と組み合わされることが多い「道化師」という、珍しい組み合わせでの公演でした。

ダブルキャストで2公演ずつ4日間のうち2日目を鑑賞。
この組は、びわ湖ホール声楽アンサンブルの現役およびソロ登録メンバー(OG・OB)によるキャスティングでした。
開演時間を過ぎてから、演出家の中村敬一氏によるプレトーク。
モーツァルト「劇場支配人」は、当初サリエリの「はじめに音楽、次に言葉」と組み合わされていたこと、「道化師」を書いたレオン・カヴァッロは、プッチーニ、マスカーニと同時代人であること、またそこから派生して、プッチーニの最初のオペラ「妖精ヴィッリ」の初演時にコントラバスを弾いていたマスカーニがそれに触発されてオペラを書くようになったこと、また「道化師」とマスカーニ「カヴァレリア・ルスティカーナ」の組み合わせはメトが発祥、などちょっとしたセミナーの内容でした。
今回なぜこの組み合わせにしたのかは語られなかったのですが(「劇場」つながり、ということは容易に推測できます)、それにしても、手元の資料に目を落とすことなく、言い淀みゼロの流れるようなトークには感嘆。
「劇場支配人」は、ジングシュピールなのですが、セリフ(シュピール)部分が圧倒的に多く、歌手が演じるものの終盤の合唱以外は歌わない、という珍しい作品。しかし、声楽家が発するセリフは何しろ声がいいので聴き心地のよいものでした――と、演劇人である我が夫は、セリフとセリフの間がありすぎてドキッとする、喜劇にはもっと畳みかけるスピード感が必要、などとダメ出ししておりました(笑)
舞台は、やや下手寄り中央に段(ステージ)が設けられ、壁には大きさも様々な額縁がランダムに配置され、これは各々プロジェクターのスクリーンになっていました。その他左右に書棚やデスク、ソファなどが置かれ、簡素ながら必要十分な設え。
次々登場する女優たちは、時代に沿った豪華なドレス。ヘルツ夫人の藤村江李奈さんとジルバークラング嬢の熊谷綾乃さんは、透明感のある高音に加え、そのドレス姿も美しく、耳に目に楽しめました。やはりオペラはこうでなくては。その他キャストの衣装も色とりどりで全体の配色も美しいものでした。
台本には、今年の夏からびわ湖ホールと東京文化会館が相次いで長期の改修工事に入る、ということが一部ネタとして組み込まれていました。幕切れには、客席を「抜いた」映像が額縁の中に映し出される、という趣向も。
休憩後に「道化師」。
実はこのオペラ、生で鑑賞するのは初めてでした。
舞台は「劇場支配人」のセットの大半をそのまま使用。先ほど客席を映していた額には、オペラの舞台であるイタリアの街並みが映し出されており、これは費用をかけず、かつ納得性の高い演出アイデア。こちらも時代設定は原作に沿ったものとなっていました。
声楽アンサンブルの若いキャストによる演唱は見応えのあるものでした。
なかでも、ネッダの山岸裕梨さんのダンスの軽やかな身のこなし。カニオが芝居でなく殺意をほのめかすのを取り繕うように芝居を続けるあたりの演技も素晴らしい。
「道化師」は何と言っても、カニオが歌う「衣装をつけろ」。カニオ谷口耕平さんのこれぞテノールの声質が私は以前から好きで、この日も張りのある美声でこのアリアが歌い上げられました――だけど、欲を言えばもうひと回り声量が欲しい。特に主役を歌うには、他のキャストを圧倒する存在感のある声が必要だと感じました。
ネッダの愛人シルヴィオ芳賀拓郎さんは、高音が美しいバリトン。かつシュッとした美青年で説得力十分。トニオの市川敏雅さん。この異形の醜男に市川さんはちょっと‥。上背があって二枚目の役が合う方なのに、逆の意味で見た目残念。こんなこともあるのですね(笑)。
幕切れは、そのトニオが、舞台上の客ではなく、ホールの客に向かって「喜劇は終わりました」と。「劇場支配人」終盤の「客席抜き」と合わせて、観客参加型のコンセプトであったようです。
最後になりましたが、指揮はキンボー・イシイ マエストロ、オケはセンチュリー。この日の座席は、ピットがよく見え、かつよく聞こえる位置だったのですが、柔軟で美しいオーケストラの響きも堪能できました。


◇座席
2階下手側バルコニー席。
1列2席のプライベート感。舞台もよく見え、最寄りの扉から出るとすぐに1階ロビーという良席。ダブルブッキングの友人から譲り受けたチケットでしたが、今後この席は狙い目。
◇その他
寒波襲来で、朝から名神高速道路は京都東ICから東が通行止め。諦めかけていたところ、11時過ぎに解除されたので、無事車で行くことができました。が、たびたび吹雪状の降雪があり、ロビーからの湖の眺めは「真っ白」でした。

