2021年10月8日(金)びわ湖ホール オペラへの招待 歌劇「つばめ」

14時開演 びわ湖ホール中ホール

プッチーニ作品の中でも上演が極めて少ない「つばめ」、貴重な鑑賞機会でした。

全4回公演のうちの初日。
この日を選んだのは、主役マグダが中村恵理さんだったから。歌唱技術・表現力ともに現在日本でもっとも実力のあるソプラノ歌手だと思っています。演奏会でアリアを歌っただけで、そこにオペラの世界が現れる。そして圧倒的な歌唱力。

通常、声楽アンサンブルの方たちだけで上演されるこのシリーズでその中村恵理さんが聴けるのは貴重な機会だと思い、午後から休みを取って(笑)出掛けたのでした。

期待通り、いえ期待を大きく上回って、やはり圧巻の演唱。「ザ・中村恵理ショー」といっていいほどの圧倒的な存在感でありました。

その他のキャストも抜けがなく素晴らしかったのですが、なかでもランバルト(マグダのパトロン)の平欣史さんのバスはハッとするほどの美声でした。

演出もその時代に合わせたものとなっており、レトロで洒落た舞台構成で違和感なくドラマに入っていくことができました。全編舞台手前に紗幕が降ろされ、情景が映し出されるという手法。限られた予算(と感じられてしまうのが切ないですが)の中で、当時の社交界の華やかな世界もよく描かれていると感じました。

しかしこのオペラ、上演機会が少ない理由もちょっとわかった気がしたのです。

ストーリーは、簡単に言うと「心身ともに健康で、死ななかったヴィオレッタ」。
高級娼婦で銀行家ランバルトの愛人としてサロンを催し豪奢な暮らしをしていたマグダが、純朴な青年ルッジェーロと出会い恋に落ち南仏で暮らすようになるが、求婚されて「自分はそのような純粋な娘ではない」と彼の元を去り、もとの愛人生活に戻る、といった内容。

ヒロインの境遇が「椿姫」に似すぎているし、2幕の始まりは「ラ・ボエーム」にそっくり。他にも「ばらの騎士」や「こうもり」、「メリー・ウィドー」を想起させるところがあったりもし、これらの作品と設定が同時代なので似てしまうのは仕方ないとしても、ストーリーに新鮮さが足りないのかな、と感じました。

とは言え、プッチーニの音楽はやはり美しく、オーケストレーションも素晴らしく、音楽作品としてももっと上演機会があってもいいのに、と思いました。そう、休憩時間を入れても2時間半、と長くないのもいいです(笑)

ところで、今回仕入れたトリビアひとつ。
「こうもり」や「メリー・ウィドー」に出てくる、踊り子「グリゼット」。日本語上演で「ネズミちゃん」と訳されていることがあり、なぜネズミなのか?ちょいと不思議だったのです。その理由がプログラム解説を読んでわかりました。当時この種の女性が灰色”Gris”の服を着ていたことから”Grisette”と呼ばれていた、とのことで、灰色=ねずみ色→ネズミちゃん、だったのですね!これを訳した人は天才!

◇その他
グッズでオペラに因み、特製「ツバメノート」とクリアファイルが売られていたので、記念にとつい買ってしまいました(笑)

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