14時開演 ザ・シンフォニーホール
今年最初の定期ではありましたが、飯森範親マエストロの首席指揮者最後の定期でした。
前半がピアニストにマティアス・キルシュネライト氏を迎えたハイドンの協奏曲とメンデルスゾーンの協奏曲第1番。後半は今年生誕150年のラヴェル作品というプログラム。
ハイドンの協奏曲は20分に満たない短い作品でしたが、キルシュネライト氏の粒立ちの整ったピアノが冴えた素晴らしい演奏。ベートーヴェンのピアノ作品につながっていく時代性をも感じました。10年掛かりのプロジェクト「ハイドン・マラソン」もあと1回を残すのみ、センチュリーに最適な選曲であったとも思います。
続いてメンデルスゾーンの協奏曲第1番。これは一昨年大フィルのメンデルスゾーン・ツィクルス時に務川慧悟さんで聴いたのですが、久し振りに聴き、やはり素晴らしく、聴き応えのある作品だと改めて感じました。
いきなりのヴィルトゥオジティ溢れる演奏から始まり、美しい歌もあり、キルシュネライト氏の美音と技巧が発揮された演奏。寄り添うオケも端正で整ったアンサンブルで、緩徐楽章の2楽章など陶然とする美しさがありました。
この作品は楽章間の切れ目がなく演奏されるのですが、マエストロの巧みな導きで、次の運びが見え、楽章の結び、主題の移り変わり、音楽のキャラクターの違いなどが鮮明に伝わる優れた演奏でもあったとも思います。
休憩後にはマエストロのプレトークがありました。
客席に座るキルシュネライト氏の紹介があり、氏とは20年来の友人であるとのこと。プログラム掲載のプロフィールによると、メンデルスゾーンの協奏曲全集をリリースされているそうで、招聘にあたり、氏の得意とする作品を採り上げたのかもしれません。
とはいえ、アンコールはショパンのノクターンおよびドビュッシー作品。ドビュッシーは後半のラヴェルに寄せたものかと推測しましたが、特に冒頭の細かで精緻な打鍵が印象的。ドイツものだけでなく、ショパンもフランスものも得意とされていることがよくわかりました。
ところで、前述のマエストロのトークでは、後半のラヴェルについてご自身の思いも語っておられました。
「ボレロ」は10歳の頃に初めて聴いて「指揮者になりたい」と思うようになったきっかけであったとか、「亡き王女のためのパヴァーヌ」は、高校生の頃ピアノでこの曲を弾いていると、今は亡きお母様が「いい曲ね」と言って傍らで聴いておられたとか、思い入れの強い作品であるとのこと。首席指揮者として最後の定期に選ばれた理由がわかりました。
その2作品の間に置かれた「マ・メール・ロワ(バレエ版)」。この演奏が非常に美しく、これぞセンチュリーの響き!という音がしていたのが印象的でした。外に向かって放出するのではなく、内包的で親密でアンサンブルの整った、透明感のある響き。これが飯森マエストロとセンチュリーが10年以上を掛けて築き上げてきた音色なのだと感じ入ると同時に、これで最後(桂冠指揮者で残られますが)かと思うと悲しくもあり‥。このままでいて欲しかったなぁ、と。
来月の定期はお休み、来期会員継続はしなかったので、私も会員としての最後の定期でありました。
◇ソリスト・アンコール
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)
ドビュッシー:「映像」第1章より「運動」
キルシュネライト氏、日本が大好きとの日本語でのメッセージのあと、曲名を仰ったのですが流暢すぎて聞き取れず(笑)