2022年7月16日(土)佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「ラ・ボエーム」

14時開演 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

毎年夏の恒例、芸文センターのオペラ。
今年の「ラ・ボエーム」はこれまで観てきたなかでも最高のものでした。

2年前に開館15周年記念として上演される予定でしたが、コロナで延期となり今年実現したものです。

日本人キャストの回を選んで行ったのですが、期待以上の素晴らしさでした。

冒頭オーケストラが鳴った瞬間、「音が大きい!」と少々ドッキリしたのですが、やがて歌が始まるとその音量に納得。

歌手の声量が凄いのです。
現在日本で考えられる最高峰のキャスト。声質はもちろんのこと、皆さん揃って声量が非常に豊か。この声量で練習を重ねるうち、遠慮なく?オケの音量も増していったのかと想像しました。

なかでも、やはり笛田さんのロドルフォは圧倒的。冒頭からその声量と輝かしい響きに心をぎゅっと掴まれてしまい、「冷たい手を」ではあまりの素晴らしさとそれを聴けていることの幸福感とで涙が滲んでしまいました。

マルチェッロ高田智宏さんの力強いバリトンも心に刺さるもので、笛田さんとの二重唱は大迫力。コッリーネ平野和さんは、3年前のセンチュリー定期「ドイツレクイエム」でのソロに大変感銘を受けたのですが、そのときと同様にホール全体を包み込むかのようなたっぷりとした響きに魅せられました。3年前に初めて拝見した際、その体格の良さにも瞠目しましたが、笛田さんも高田さんも同じくらいの高身長。つくづく「ハイレベル」なキャスティングでありました。ショナール町英和さんも決して小柄ではないと思いますが、なにしろ他の3人が高いのでやや埋没気味。でもその分、陽気で小回りの利くキャラクターの表現が際立っていたと思います。

レベルの高い歌唱で聴くと、各々の人物像がくっきりと立ちあがってくるものなのですね。このオペラは、ミミとロドルフォの悲恋物語であると同時に、青年たちの群像劇であると再認識させられたプロダクションでもありました。

そして、砂川さんのミミ。ミミといえば砂川さんしかいません(笑)。
この日は高音に少し難があるようにも思えましたが、終盤の絶命直前の歌唱、消え入るような小さな小さな高音・・その歌唱技術の高さとそこに込められた情感とに胸を打たれました。

演出は王道、オーソドックスなものでした。びわ湖でもそうですが、佐渡さんのオペラは敢えて初心者でも楽しめるようにつくられているので、難しいことは何も考えず、どっぷりとその世界に浸ることができます。

舞台も豪華で見応え十分。今回の演出家は、ハリウッド映画でも有名な、ダンテ・フェレッテェイ氏。近年オペラにもよく使われているプロジェクション・マッピングは用いず、昔ながらにつくり込んである舞台は「これぞオペラ」の感がありました。

特に第二幕、カフェ・モミュスは外観の書き割りが引き揚げられると内部のにぎやかな店内が現れるという仕掛けになっており(その瞬間にも心を掴まれました)、このホールの奥舞台の広さ(見えている舞台の2倍の奥行きがあるのです)を生かした舞台づくりに感嘆。そして、合唱、児童合唱も含めたクリスマスの賑やかな情景、舞台上の人の多さ——舞台の上にこんなにも大勢の人がいる、そのことにも感動してしまったのでした。

ところで、唯一本来と異なった設定になっていたのは主人公たちの住まいで、パリのアパルトマンの屋根裏部屋ではなく、セーヌ川に浮かぶ廃船になっていました。
若い人たちが船を安く借りてシェアして住まうのは、この時代から現代に至るまでヨーロッパではよくある習慣だそうで、それが発想の元になっているとのことですが、「ボエーム」=自由で社会規範にとらわれない青年たち、安定を求めず、「地に足のついていない」生き方には、川面に浮かぶ船が住まい、というのがぴったりくる、と大いに納得しました。

冒頭ミミはその船の様子を隣の建物の窓から覗いていて——これは、ミミの方が最初からロドルフォに興味・好意を持っていて、ミミから仕掛けた恋愛、という演出なのでしょう。途中で消えるのはわかっているのに、わざわざローソクの火を借りに来る。ローソクは口実(笑)——と妄想するのも楽しいものです。

音楽、歌唱、演出すべてが高いレベルで揃ったこの素晴らしいプロダクション。
2年待って鑑賞することができて幸せでした。カーテンコールで登場された砂川さんが泣いておられたのが印象的でした。

 

◇座席
1階Q列下手側。
前席はチケットを取ったときは予約済みでしたが、なぜか空席。またもや幸運な視界良好。

◇その他
3年前から恒例となっている、姉夫婦と我が家の4人での夏のオペラ鑑賞第3弾でした。
第1弾のトゥーランドットは途中で停電、一昨年はコロナで中止、第2弾昨年のカルメンは「変な演出」。今回やっと「これぞオペラ」を堪能でき、皆大満足!

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