2023年10月9日(月・祝)新国立劇場「修道女アンジェリカ/子どもと魔法」

14時開演 新国立劇場オペラパレス

今回の東京旅行のもう一つの目的はこちらのダブルビルのオペラ。新国立劇場の今シーズン開幕プロダクションの楽日でした。
(うまい具合に3連休に「推し活」が嵌まりました)

前回最後に東京に行ったのが、同じく新国立劇場のダブルビルでツェムリンスキー「フィレンツェの悲劇」とプッチーニ3部作より「ジャンニ・スキッキ」。2019年4月でした。

今回は同じくプッチーニの3部作より「修道女アンジェリカ」とラヴェル「子どもと魔法」。
指揮は沼尻マエストロ、演出は粟國淳さんでこれも前回と同じ。つまり、私としてはつながっている訳です(笑)。

前半のアンジェリカは、ダイナミックな舞台転換が印象的でした。
客席からは見えない両翼の舞台を使い、舞台上の建物が長大に造られており、左から右に建物がサーっと滑らかに流れていった場面転換にはハッとする感動がありました。また終盤にその建物が舞台ごとセリに降りていき、建物上部にモノトーンの空間が出現したのも圧巻でした。ここまで舞台機構を大規模に使ったオペラを観たのは初めてのことでした。

1幕ものなので幕を降ろしての舞台転換が行えないわけですが、それを逆手に取り観客の目の前で行って見せ場とすることが演出コンセプトのひとつだったのかもしれません。

この「修道女アンジェリカ」は、舞台が修道院で、女性しか出て来ない珍しいオペラ。しかも様々な階級の修道女が院長以下13人もいて、階級、職種ごとに服装は異なるものの、「ワルキューレ」以上に誰が誰だかわかりません。プレトークで沼尻マエストロが「皆同じ格好で顔も半分隠れているし誰にキュー出しすればいいのかわからない」と仰っていましたが、冗談とはいえ、さもありなん、です(笑)。

しかし声には明確な違いがあり、またソプラノよりもメゾの深い声の方が個性的で印象に残るものだと感じました(誰であるのかはわかりませんでしたが笑)。

題名役のみが外国人キャストで、イタリア出身のキアーラ・イゾットン氏。
この日はあまり好調ではなかったのかもしれませんが、高音部は少し無理をしているような発声に聴こえました。プッチーニなので、もっとリリカルで艶やかな声で聴きたかったところです。

奇跡が起きて亡くなった子どもと巡り合える、という幕切れのシーンは、本当に子どもと会えたのかどうかがわかりづらく少々残念でした。

ちなみに、舞台背景にアクションペインティングのような抽象的な十字架が大きく描かれており、その交差部分に小さなアーチ形の開口が穿ってあったのですが、そこからハト時計のように子どもが現れる、という悪い予感は幸いにも当たりませんでした。安堵。しかしあの開口は何だったのでしょう?謎。

休憩が35分間もあったので、劇場内をうろうろとしましたが、1階のホワイエはかなり広く、喫茶スペースのテーブルや椅子も充実、さすが国立だと思いました。オペラは本来社交の場でもあるので、こういったスペースも贅沢に欲しいものです。県立なので比べるべきではありませんが、びわ湖や芸文センターはこういうところがやや貧弱だと感じています。

休憩後は「子どもと魔法」。
こちらはアンジェリカとは対照的でじつにカラフルで魅力的な舞台。ディズニーランドのアトラクションのような楽しさいっぱいの舞台でした。観客には制服姿の高校生も多かったのですが(音楽高校の生徒さんたちでしょうか?)、大人だけで観るのはもったいないと感じる可愛らしさでした。

内容も、ディズニー映画の「美女と野獣」や「トイ・ストーリーズ」のように、物や動植物が「人格」を持って動き喋る、というファンタジーで、私の大好きなジャンル(笑)。着ぐるみなどの衣裳も可愛らしく(私のお気に入りは「アマガエル」の被り物)、とにかく見ているだけで楽しいものでした。

こちらも題名役のみ外国人でフランス出身のクロエ・ブリオ氏(題名役は母語話者の方針なのでしょうか)。すでにこの役を200回以上演じているとのことでしたが、小柄で可愛らしいソプラノで少年役がぴったり来ます。
その他のキャストは、ひとりで2~3役をこなしておられましたが(そのため袖で歌って代わりにダンサーが演じる場面も)、コミカルな演技、歌唱とも皆さん素晴らしかった。特に「火」「お姫様」「夜鳴き鶯」の三宅理恵さんのコロラトゥーラは美しく印象的でした。

バレエやダンスも見応えがあり、コロナ禍での制約が解除され、総合芸術であるオペラを堪能できた、短いけれど充実したプロダクションでした。

◇座席
ちょっと節約してB席。3階上手側前から2列目。舞台はよく見えたけれど、ピットは被って見えず。次回はやっぱり2階の最前列ですね(来年3月の「トリスタンとイゾルデ」は観に行くつもりです!)

タイトルとURLをコピーしました