2023年6月8日(木)尾高忠明指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 メンデルスゾーン・チクルスVol.1 ヴァイオリン アラベラ・美歩・シュタインバッハー

19時開演 ザ・シンフォニーホール

毎年の大フィルの作曲家シリーズ、今年はメンデルスゾーン。
交響曲5作品にそれぞれコンチェルトや序曲を組み合わせた4回公演で、この日が第1回でした。

序曲「静かな海と楽しい航海」と有名なヴァイオリン協奏曲、それに演奏機会の少ない交響曲第1番というプログラム。「メンコン」ことヴァイオリン協奏曲は生で何度も聴いていますが、他の2曲を聴くのは初めてでした。

「静かな海と楽しい航海」は、ゲーテの詩に基づいて作曲されたもので、「標題音楽」の先駆けともなった作品。ベートーヴェンに同名のカンタータがありますが、これがゲーテに不評だったため、メンデルスゾーンは器楽のみで詩の世界を提示したとのこと。冒頭の凪いだ水平線の描写や、陸地への到着を表すファンファーレなど、分かりやすい音楽でした。

「メンコン」のソリストは、アラベラ・美歩・シュタインバッハー氏。スラリと美しい立ち姿、艶やかで細い一本の線のような音色のヴァイオリン。雑味がまったくない大変に美しい魅力的な音なのですが、コンチェルトとして聴くには少々音量が物足りない。オケがソロ・ヴァイオリンに合わせて音量を落としているのと、全体にテンポ設定が緩やかなのとで、その響きは「疎」な印象。聴き慣れた曲であるのもあり、少々引いた態度で聴いていました。しかし演奏後にはかなりの「ブラボー!」が飛んでいたので、いい演奏だと感じた方は多かったのでしょう。

後半の交響曲第1番はなんと15歳のときの作品。ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン、ウェーバーなどの影響を受けながら書いたそうですが、すでに一流作曲家の作品。天才! キャッチーな主題こそないものの、4つの楽章それぞれが際立っていて、聴き応えのあるものでした。演奏後のマエストロのお話では(ある程度長くお話しになるのであればマイクを使って欲しい)、大フィルのメンバーの殆どがこの作品を演奏するのは初めてだったとのこと。こういった取り上げられる機会の少ない佳作を演奏するということでも、この作曲家シリーズは意義があるものだと感じました。

◇ソリスト・アンコール
イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番

◇座席
招待券での入場→2階最後列にて鑑賞。
しかしこの日の自らの鑑賞姿勢として、やはり演奏会は「身銭を切って」チケットを買って聴くべきものだと思いました。

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