19時開演 ザ・シンフォニーホール
オケ定期としては珍しい、8月に開催のセンチュリー定期。
前半はチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルト、後半にR.シュトラウスの交響詩2曲というプログラム。私にとっては「予習不要」のコンサートでした(理由は後述)。
2019年チャイコフスキー国際コンクール ヴァイオリン部門で2位受賞のブシュコフ氏。このときのピアノ部門で2位だった藤田真央さんと、昨年のヴェルビエ音楽祭で共演(ベートーヴェンのソナタ全曲演奏)していたことから名前を知り、その演奏を聴けることを楽しみにしていました。
ヴァイオリンが小さく見える立派な体格と、既に巨匠然とした佇まい。どのような演奏が繰り広げられるのだろうと期待が高まりましたが——と、冒頭から繊細でおとなしめのアプローチ。エネルギッシュでアグレッシブな演奏を予想していたのですが、意外と女性的(この表現は妥当でないかもしれませんが)な演奏でした。フィナーレで頂点に持っていく設計かとも思いましたが、最後までトーンは変わらず。こう言ってはなんだけど、少々期待が高すぎたかな、と。音色も技巧も申し分ないのですが、あと一歩の熱量(もしくは音量)が足りないというか‥。
「チャイコン」は生で聴く機会は多いものの、なかなか名演に当たらない作品でもあります。単純に難しいのかな?とも。
と、しかし、アンコールで演奏されたイザイの無伴奏ソナタは、重音のたっぷりとした響きが素晴らしく、このヴァイオリニストの本領を聴けた気がしました。救われた思い。
後半は、R.シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」と「死と変容」。「予習不要」と冒頭に書いたのは、1度や2度聴いたところで全く頭に入ってこない、というのがその理由。経験知?です。なので、今回は2曲ともさらっと1回聴いただけで(予習しとるがな)鑑賞に臨みました。
考えることを放棄して聴くと、幾重にも重なったオーケストラの豊かな響きを全身で浴びる贅沢な時間でありました。センチュリーでは珍しくホルンが不調だったのが少々残念。
◇ソリスト・アンコール
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第5番ト長調 作品27より第2楽章
ブシュコフ氏はそのお名前からロシア出身かと思っていましたが、ベルギー出身とのこと(ロシアとウクライナの血を引く、とプロフィールに表記あり)。イザイを弾く説得性があります。フランス語での曲目紹介でした(聞き取れなかったけど)。