2024年9月20日(金)オーギュスタン・デュメイ指揮/関西フィルハーモニー管弦楽団 第349回定期演奏会 ギター大萩康司

19時開演 ザ・シンフォニーホール

フランスとスペインに因む作品で構成された、ほぼ「名曲プログラム」の定期演奏会。

フォーレ「パヴァーヌ」から始まり、大萩康司さんをソリストに迎えた「アランフエス協奏曲」、休憩を挟んで「牧神の午後への前奏曲」、「カルメン組曲」、ラロ「スケルツォニ短調」というラインナップ。

フランス、スペイン系の音楽は、難解さがなく、耽美的であったり、リズミックであったりと、そのまま楽しめるものが多いのですが、そのような作品がズラリと並んだ魅力的なプログラムでした。

私の今回のお目当ては、なんといってもギターの大萩康司さん。昨年リサイタルに行き、ギターの魅力に目覚めてしまったのです。というギター鑑賞初心者で、アランフエス協奏曲も今回初めて生で聴いたのですが——「アランフエス」と聞いてすぐに思い浮かぶ哀愁を帯びた2楽章の主題、その旋律に挟まるように奏でられる2回のカデンツァが大変印象的で素晴らしく、感銘を受けました。

この作品は、スペインの内戦で被害を受けた古都アランフエスへの平和への思いを込めて作られたそうですが、カデンツァで奏でられる不協和音はその情景や心象風景を想起させるもの。マーラーのハープの使い方に似ていると感じたのですが、弦でボロロン、と奏でられる不協和音には独特の虚無感があり、廃墟と化した街並みやそれを目にした作曲者の心情が浮かんでくるのです。また、これには現在の世界情勢への大萩さんのメッセージも込められているのでは、と感じました。

予習で聴いていたナルシソ・イエペスのカデンツァはここまで不協和音を強調していなかったので、これは大萩さんのオリジナルかと推察したのですが、そのギターの音色とともに今後も記憶に残り続けるに違いないと思える名演でした。

ソリスト・アンコールは「タンゴ・アン・スカイ」——このタンゴのリズムとカッティングの耳障りの良さ。カッコいい!ますますギターにはまりつつあります‥。

ちなみに、ギターの音量を補うために横にアンプが設置されていました。オケは弦12-10-8-7-6と低弦を厚くした12型。弱音器をつけていたのですが、2楽章2回目のカデンツァ後のヴァイオリンが主題を強奏する山場の部分で迫力が削がれてしまい残念。弱音器で小さくするのではなく、最初から数を減らしていた方が良かったのでは?と疑問を持ちました。

ところで、このプログラムは「パヴァーヌ」、「牧神」、「カルメン組曲」の間奏曲、とフルートが活躍する作品が並ぶものでもありました。これらの有名な旋律、椎名さんのソロはどれも美しいものでした。

終曲のラロ「スケルツォニ短調」は初めて聴く作品でしたが、シンコペーションのリズムが立ったキャッチーな楽曲で——今でもふとした瞬間にメロディが浮かんできます——これを知ることができたのは収穫でした。この作品は、元々はピアノ三重奏曲第3番の2楽章だったものをラロ自身が管弦楽用に編曲したものとのこと。作曲家もお気に入りだったということなのでしょう。

と、しかし——この景気の良い(二短調ではあるものの)曲は、冒頭に持って来て演奏会を活気づかせ、終曲をパヴァーヌにして気持ちを落ち着かせて終わり、の方が座りがよかったのではないかとも思いました。

加えて(文句垂れでスミマセン)、各楽曲の演奏も、始まりに集中力が感じられず、中盤以降は盛り上がって名演になるものの末尾部の終結感が薄い——といった様子で、マエストロの采配への疑問を抱いてしまう部分もあった演奏会でもありました。全体的な満足度は高かったのですが。

◇ソリスト・アンコール
ローラン・ディアンス:タンゴ・アン・スカイ

◇座席
2階最前列 中央ブロック下手側
センチュリー定期のマイシートに近い「いつもの席」

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