2021年8月28日(土)尾高忠明指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 ドヴォルザーク・セレクションⅡ ピアノ北村朋幹

14時開演 ザ・シンフォニーホール

ドヴォルザーク・セレクション、第2回目。
尾高マエストロが療養から復帰されて行われました。

極めて満足度の高い演奏会でした。
3部作序曲の2作品目「謝肉祭」、ピアノ協奏曲、そして「ドヴォ8」こと交響曲第8番。

今回の私のメインは、滅多に演奏されない「ピアノ協奏曲」。
難易度が高い割にはピアノ独奏の見せ場が少ないということが演奏機会が少ない理由らしいですが、予習しようにも音源が少なく、動画サイトでも数が限られていて、CDを購入して聴きました。

ですが、これ、隠れた名曲ですね。よく演奏されるラフマニノフやチャイコフスキーなどのようにキャッチーなメロディはないですが、ドヴォルザークらしいボヘミアの自然を彷彿とさせる曲想が随所に現れ、平原に吹き渡る風のような爽やかさや土の香りを感じる素朴さがあり、オーケストレーションも華やか。すっかりこの曲が好きになってしまい、演奏会本番までに繰り返し何度も聴きました。

今回の演奏会では、ピアニストが北村朋幹さんであったのも期待度が高いものでした。
北村さんは、違う世界からふっとその場に現れたような、寂しげな王子様といった風貌で、独特の世界観を秘めた感じの佇まいにまず心を掴まれます。

そして、その演奏も素晴らしいものでした。
ピアノはスタインウェイでしたが、年代物のピアノのようにマットでしっとりとした音色に調律してあり、これが曲調にとても合っていたのです。私が聴いていた音源がいずれも古いものであったので(古い音源のものしか出回っていないようです)、ピアノはホンキートンクのような古ぼけた音色だったのですが、それに通ずる音色でもあり、思わず膝を打ちたくなるようなーーそうそう、これこれ!ーー嬉しさがありました。

北村さんの、ピアノ独奏というよりもオーケストラと一体となってアンサンブルを楽しんでおられるような様子もこの曲の演奏に相応しいと感じましたし、なによりそのテクニック。指が縦横無尽に鍵盤を駆け巡る様を実に嬉しく頼もしく、そして、この作品を生で聴けるのはこれが最初で最後かもしれない、という一期一会の気持ちでじっくりと堪能させていただきました。

それから、椅子(笑)。前回大フィル定期でモーツァルトを弾かれたときは、オケ奏者と同じ金属フレームのスタッキングチェアだったのに驚いたのですが、今回はコンマスやチェロ奏者と同じ、高さ調節のできる背もたれのついた黒い木製椅子でした。演奏会用ベンチタイプの椅子でないのはこだわりなのでしょうか?しかも演奏が終わった後、まるで学生のように礼儀正しくピアノの奥に押して直しておられたのには思わず笑ってしまいました。

やはり独特の感性を持っておられるようで、次はリサイタルでその世界観を堪能したいと思いました。また、このコンチェルトは今回新たにレパートリーにされたらしく、もちろん暗譜でしたがピアノの上に楽譜を置いておられたのも(お守り?)なんだか微笑ましかったのでした。

と・・北村さんのことばかりでこんなに書き連ねてしまいました。しかも音楽的なことはあまり書けずに(いつものことですが 笑)

後半の交響曲8番の演奏も素晴らしく、なかでもファンファーレの金管の輝かしい響きは目を瞠るものがありました。鋭く強靭なトランペットの音色の先を双眼鏡で覗いたところ、なんと元N響首席奏者の関山さんが首席客演で演奏されていました。やっぱり違うなーと感服。

実は前回の演奏会は、全体として満足感は高かったものの、演奏瑕疵がいくつかーーかなり致命的なものも含めーーあったのですが、今回は全くなし。完成度にデコボコがあるのもこのオーケストラの特徴かと思ってしまったのでした。

尾高マエストロは、終演後はやはりお疲れになったのかカーテンコールでの足取りがゆっくりとされていのが少し気になりましたが、演奏中は以前と変わらずお元気な様子で安心しました。

◇座席
2階FF列の下手側。ピアノを聴く場合の定番席。
緊急事態宣言下でしたが、土曜日だったためか前回よりは少し客入りが良かったように見えました。

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