2024年3月15日(金)鈴木優人指揮/日本センチュリー交響楽団280回定期演奏会 チェロ宮田大

19時開演 ザ・シンフォニーホール

今期最終のセンチュリー定期。

鈴木優人マエストロのセンチュリー定期デビューであったこの公演は、マエストロの提案によるプログラムでパリ(国立高等音楽院)に因んだものでした。

プログラム解説によると、矢代秋雄氏のピアノ協奏曲を関フィルで演奏した際、聴きに来られていた矢代氏の奥様から「ぜひ演奏をお願いします」とチェロ協奏曲のスコアを託されていたので、今回宮田大さんのソロで演奏することとし、そこから矢代氏のパリでの師メシアンの作品、そして同じくパリ国立高等音楽院出身のサン=サーンスの交響曲、という形でプログラムを構成したとのこと。ちなみに矢代秋雄氏は優人氏のお父様、鈴木雅明氏の東京藝大での師症だったとのこと。音楽家の系譜が繋がっています。

1曲目のメシアン「忘れられた捧げもの」。
予習で聴いていた際には、半音階を多用した不安定な音型から、鉤状のものが突き刺さるような痛みを連想していたのですが、プログラム解説を読んで納得しました。「捧げもの」とは十字架上のキリストのことだったのです。受難節の今の時期に合わせた選曲だったのでしょうか。

この作品へのメシアンの序文もプログラムに紹介されており、それを読んでから聴くと非常に分かりやすい音楽でした。メシアン=トゥーランガリラ交響曲=よく分からない、という図式が自分の中で出来上がっていたのですが、それが少し克服できました。

続く2曲目は先述の矢代秋雄「チェロ協奏曲」。
宮田さんのチェロは流石で、艶やかで深みのある音色が豊かな音量でよく響きます。中盤の琵琶か三味線を思わせるピツィカート、それにアルト・フルートが掛けあう部分は日本的な幽玄の美。黛敏郎の「BUNRAKU」や伊福部昭の舞踊音楽「サロメ」を思い出しました。終盤の不協和音での重音も確かな音程ならではの説得力で、この作品の魅力を十分に堪能することができました。

後半はサン=サーンスの交響曲第3番。
これも素晴らしい演奏。なんといってもシンフォニーホールのパイプオルガンの重低音。2階中央の座席はちょうどパイプオルガンと向き合う位置なのですが、ここで感じる音圧と振動は得難い音楽体験でした。

この演奏会全体を通して、優人氏の的確なタクトと端正で美しい音色を持つセンチュリーはとても相性がよいと感じました。センチュリーの客演指揮者になっていただけたらよかったのに。この日がセンチュリー定期でのデビューだったとのことですが、今期から関フィルの首席客演指揮者に就任されたので、これが最初で最後の定期出演だったかもしれません。残念‥。

◇ソリスト・アンコール
滝廉太郎:荒城の月

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