2024年10月13日(日)ル・ポン国際音楽祭2024 赤穂・姫路

18時開演 アクリエひめじ 大ホール

ベルリンフィル第一コンサートマスター樫本大進氏が音楽監督を務め、氏ゆかりの地で毎年開催されている音楽祭。今回思いがけずお誘いいただき行くことができました。

この日は最終日で、3年前にオープンした「アクリエひめじ」での公演。世界的奏者が集った極上の室内楽を堪能しました。

すべてシューベルトの作品でのプログラム。
前半は、弦楽三重奏曲から始まり、ピアノ三重奏の「ノットゥルノ」、テノール歌手マーク・パドモア氏を迎えた「白鳥の歌」のうち後半7曲。

特に美しかったのは、2曲目の「ノットゥルノ」。
アレッシオ・バックス氏のピアノ、冒頭の丸くあたたかく響く一音がハッとする素晴らしさ。一音で持って行かれるピアニストに出会う喜び。そのピアノに樫本さんのヴァイオリン、趙静氏のチェロが重なる極上の美。ピアノの丸い音色と弦のピツィカートの相性が素晴らしい。「ノットゥルノ」は「ノクターン(夜想曲)」のイタリア語ですが、森の木漏れ日のような明るさを感じるものでもありました。天国で聴きたい音楽。

歌曲集「白鳥の歌」は、「セレナーデ」が有名ですが、私は高校生の頃、どうしてもこの曲を歌いたくて楽譜を購入し、レコードを聴きながらドイツ語にカナを打ち、ピアノ伴奏部分を練習したのち弾き歌いをする、ということをしていたので(ヒマだった?笑)かなりの思い入れがあったのですが、残念ながら全14曲のうちの後半7曲のみの演奏で「セレナーデ」は含まれず。

しかし今回、ン十年ぶりに楽譜を引っ張り出して予習しました。「セレナーデ」以外は見たこともなかったのですが、楽譜を取っておいて役に立ちました。

この作品集は、フィッシャー=ディースカウやヘルマン・プライなどバリトン歌手のイメージがあったのですが、私の持っている中声用の楽譜には、譜面よりも2~3度上の調性が原調との注釈があるので、本来高声用に書かれたものなのかもしれません——などと、ン十年後に考察。

マーク・パドモア氏は白髪の遠目にツィメルマン似の風貌で、気品ある佇まい。時折平たい発声になるのが少々気になりましたが、清澄で豊かな歌唱を堪能しました。なお、8曲目「アトラス」からの始まりでしたが、この日はアトラス彗星が見頃だったそうで、それに因んだものかとも思われました。

後半は弦5部にクラリネット、バソン(ファゴット)、クラリネットが加わった、八重奏曲。
上手側手前に座ったクラリネット奏者を見て、一気にテンションが上がりました。なんとベルリンフィルの首席奏者、ヴェンツェル・フックス氏だったのです!いや、他の方も私が知らないだけで皆さん世界的な奏者なのですが、「デジタル・コンサートホール」でしょっちゅうお目にかかっている、あのフックス氏がそこに居る、というだけで嬉しくなってしまったのです(笑)

ということで、クラリネットの印象が強く残っているのですが、そのひたすらに美しい音色に感嘆しました。1stヴァイオリンに続いて同じ旋律を奏でる箇所がいくつかあったのですが、ヴァイオリンの細い音色をそのままなぞったような音質なのです。こんなに繊細に響く楽器なのだと目から鱗が落ちる思いでした。

この演奏では、樫本さんは2ndだったのですが、隣のヴィオラ ギャレス・ルベ氏と絶えずコンタクトを取り、楽しそうに演奏されていたのが印象的でした。内声の楽しみ=アンサンブルの楽しみでしょうか。そんな様子が見れるのも室内楽の醍醐味です。

それにしても——個々の楽器の音色がはっきりと聞き取れ楽しめる、これが室内楽の楽しみではありますが、それをこの世界的レベルの奏者で聴ける——これはルツェルンやヴェルビエと同水準ではないでしょうか?——なんとも贅沢な音楽祭。これがスイスまで行かずとも新快速に乗って行くだけで聴けるという幸せ。樫本さんに感謝です!

◇座席
2階13列(実質3列目)下手側。
このレベルの出演者で入場料1,000円!ヒト桁違うのではないかと二度見の金額。

◇その他
奏者の出身地を後から調べたところ、ヨーロッパはもとより、日本、中国、アフリカ、中東、中南米・・個々のルーツはもっと多様なのでしょう。ブローバル化、ボーダーレス。まさに「国際音楽祭」です。

ところで、アクリエひめじには初めて行きましたが、内も外もほぼフェスティバルホールなのに驚きました。日建設計、それでいいのか!?

 

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