2024年4月19日(金)第4回 芦屋国際音楽祭オープニングコンサート

19時開演 カトリック芦屋教会

芦屋市出身のヴァイオリニスト、日下紗矢子さん主催の芦屋国際音楽祭。
もうすっかり春の恒例行事です。

昨年と同様、テレワークでの業務を定時で終え、自転車を飛ばして会場へ。一番乗りで到着、ポールポジション発進で最前列左側の席を確保。平土間での鑑賞は場所取り八分です。

3日間にわたるこの音楽祭は全5公演あり、その中で最も聴きたかったのがこのオープニングコンサートでした。クラリネット読響首席の金子平さん、ヴァイオリン「葵トリオ」の小川響子さん。このお二人をぜひ聴きたかったのです。

また、リュートが通奏低音として入ることにも興味があり、その音色を間近で聴けることも楽しみのひとつでした。

1曲目、バッハよりも一世代上のバロック期の作曲家ビーバー「食卓の音楽」パルティータ。冒頭、日下さんと小川さんのヴァイオリンが聴こえた途端、早くも涙腺が刺激されてしまいました。自分でもこのスイッチがどこにあるのか未だによくわかりません。

間近で見て聴くリュート。一瞬で中世ヨーロッパの世界に誘われます。左側(上手)の席を選んだのは、ヴァイオリンを正面から見たいということのほかに、音量が小さいリュートをしっかりと聴きたい、ということもあったのですが、狙いは当たり、控え目なリュートの音もしっかりと聴くことができました(作戦成功)。

2曲目は金子さんのソロで、現代の作曲家ライマン「クラリネットのための独奏曲」。これは金子さんの師匠でもあるザビーネ・マイヤー氏の為に書かれた作品で、クラリネットのあらゆる奏法が盛り込まれた興味深いものでした。どうやって鳴らすのかわからないブルブル、ゴポゴポとした音やクラリネット独特の甲高い音など、一歩間違えれば不快になりかねないスレスレの音楽を楽しんで聴けるのは金子さんの技術あってのこと。

次にヴァイオリン2台とヴィオラおよび通奏低音のリュートでバッハ作とされるトリオ・ソナタ。
この曲では小川さんがトップを弾いたのですが、その演奏にもうすっかり魅せられてしまいました。

1曲目を含め、前半は立奏だったのですが、体を大きく使った伸びやかな動きとそこから立ち上がる躍動感あふれる音楽。隣の奏者と常にコンタクトを取りながら演奏するコミュニケーション能力の高さは、常設トリオでの演奏経験からくるものなのでしょうか。アンサンブルをする喜びに満ちた演奏で、見ているこちらも嬉しくなってしまいました。

休憩後は弦楽カルテットにクラリネットが加わったモーツァルト「クラリネット五重奏曲」。
これがもう究極に幸せな時間でした。

超一流の奏者のアンサンブルは、各々自由な歌心がありながらも呼吸がピタリと合っており、アインザッツはもとより、フレーズ末尾がぴしりと揃う快さ。

急ー緩ー急ー緩 の構成も見通しがよく、3楽章のメヌエットで再現部を大きく膨らませてアタッカで4楽章に入る瞬間——実はこの作品はこの場で初めて聴いたのですが、聴いた瞬間「わかった!」と思いました——それくらい全員の音楽の方向性が合っている見事な演奏でした。

中央に座る金子さんのクラリネットの響きと教会のヴォールト型の天井は相性がよく、球状に発せられるまろやかで豊かな音色に心酔。弦楽四重奏の中央で歌うソリストのクラリネット——クラリネットを中央に据えた配置は、音響的にも音楽的にも大正解であったと思います。

モーツァルト「クラリネット協奏曲」は中学生の頃から聴いている大好きな作品なのですが、それと同様の演奏を極々至近距離で聴けている幸せ。また、その距離感ゆえに自分は演奏していないにもかかわらずアンサンブルに加わっているような感覚にもなり、「音楽をする喜び」に浸っていました。

ここでしか味わえない至高の音楽体験。来年以降もずっと聴き続けていきたいです。
——と、翌々日のクロージングコンサートにも行く予定なのでした(笑)

◇アンコール
日下さんの短いスピーチと曲紹介。
ベールマン:クラリネット五重奏曲よりアダージョ

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