19時開演 カフェ・モンタージュ
ほぼ1ヶ月振りのコンサート。
そして約2年振りのカフェ・モンタージュ。
素晴らしいヴァイオリンとピアノを堪能しました。
6月のアルティホールでのトリオに行きそびれ(他コンサートとバッティング)、残念に思っていたヴァイオリニスト黒川侑さんと、葵トリオのピアニスト秋元孝介さん。このお二人のコンサートということで、即予約。
カフェ・モンタージュのコンサートは、平日は通常20時開演で演奏時間は1時間なのですが、この日は19時開演で2時間近くありそう、というのもポイントでした。
ベートヴェンのヴァイオリンソナタ第2番と初聴きのメトネル「ノクターン第3番」、休憩を挟んで後半はいずれも「ニ短調」の作品で、バッハ「シャコンヌ」(ヴァイオリン独奏)、ショスタコーヴィチ「前奏曲とフーガ」の終曲第24番(ピアノ独奏)、そしてブラームスのヴァイオリンソナタ第3番、という充実のプログラム。
調性にこだわったプログラムで、まず明るいベートヴェンのソナタから始まり、次に調性がコロコロ変わるつかみどころのないメトネルのノクターン。そして後半にずっしりと「ニ短調」。
やはり後半が非常に印象深いものでした。
ショスタコーヴィチのこのピアノ作品は初めて聴くものでしたが、冒頭が「シャコンヌ」と全く同じ音型(調性が同じなので、本当に全く同じ)であるのにハッとさせられたのですが、これはショスタコーヴィチがバッハ没後200年記念のコンクールの審査員を務めたことがきっかけで生まれた作品とのこと。
「プロパガンダ色の欠けた純音楽的作品」と評されもしたそうですが——しかし、コーダで執拗に繰り返される和声感のないフレーズは、どう聴いても「ショスタコーヴィチ」で、シュプレヒコールのようにも聴こえる。何か、言葉にはできない思いを音楽で大きく訴えているかのよう。その秋元さんの大迫力の演奏。これがもう素晴らしくてすっかり引き込まれてしまいました。
この会場のヴィンテージ・スタインウェイの音色もこの音楽と相性がよく、また、小さな空間でこれだけ激しく連打しているのに音量が大きすぎるとは全く感じず、永遠に聴いていたい、とすら感じました。
その熱量のまま、ブラームスのヴァイオリンソナタ。これはもう若い実力者お二人が、相手に不足なしの感で、がっつりと取り組んだ大熱演。ここに至るまでの演奏で、この作品の演奏への期待値が大きく膨らんでいたのは言うまでもなく——どんなに激しく弾こうとも美しい透明感を保つ黒川さんのヴァイオリン、前曲に続き迫力の秋元さんのピアノ——これが息ぴったりで合わさるのも快感。素晴らしい!それをこの至近距離で聴ける贅沢。
付け加えて——こちらの耳も「ニ短調」にすっかり囚われてしまったのか、2楽章アダージョ ニ長調の美しい歌も、どこか「天井のある幸福」のように感じられたのが、我ながら興味深いことでありました。プログラムの策に嵌ったのかもしれません。
さて、この日は(おそらく)特別に、終演後に「レセプション」があり、観客にシャンパンなどの飲み物が振る舞われました。黒川さんと秋元さんも会場に呼び戻されたのですが——黒川さんはCD購入者へのサイン、秋元さんは常連らしき男性客に話し掛けられていて——ひとりで行ったので、その会話が終わるまでの待ち時間を持て余しそうで、グラスが空くと戻しに行き、そのままスゴスゴと退散、帰途に着いてしまいました。「すみませーん」と会話に割り込む勇気も図々しさも持ち合わせておらず——せめて秋元さんに「素晴らしかった!」と一言お伝えしたかったのですが——モヤモヤ、残念。