19時開演 フェスティバルホール
今年のウィーン・フィル大阪公演はブルックナーの交響曲第5番。ティーレマンでウィーン・フィルでブルックナーが聴ける!ということで、大変楽しみにしていた公演です。

昨年の生誕200年イヤーでは、第1番から9番まで生鑑賞コンプリートしましたが、今年は今後の予定を含めてもこれ1公演のみ。ということで、一点全集中?スコアを買って予習して臨みました(読み込むところまでは至らず‥)。
この5番、1楽章で主題が3つも出てきたりし、ゲネラル・パウゼも多く、これまで生で聴いた際にも「とっ散らかった」印象が強かったのですが、一度ブルックナーにハマってしまうと、至るところにブルックナーらしさが漂っていて、それが堪らない――つまり「ブルオタ向け」の作品だと感じています。
なので、演目に拘わらず「ウィーン・フィルだから聴きに来る」という聴衆にはやや不向きではないかと思っていたのですが、2階席から見渡す限り、ほぼ満席のように見えました。
マエストロは暗譜。熱のこもった指揮で、どっしりとしたテンポでこの長大な交響曲を「築き上げる」感の演奏でした。このテンポ感、やはり私にはしっくりと来るもので、最も好きなマエストロのひとり、という認識を新たにしました。
どっしりとした印象はありつつも、例えば1stヴァイオリンの方に向いて指示を出すなど細かい動きも多くあり、スカラ座フィル時のチョン・チョンフン氏の「動かなさ」はやはり特別だったのかと思ったり。
編成はもちろんの弦16型。対向配置で、コントラバスの後ろにテューバ→トロンボーンと低音パートをまとめてありました。特筆すべき珍しい体制としては、ティンパニは1セットなのに奏者がもうひとりいて、1楽章と4楽章のコーダで反対側からトレモロを叩いていたこと。これは初めて見るもので、しかもちょっと笑えたりもする光景でした(後で知ったのですが、これはカラヤンがやっていたことのようです)。
さて、その演奏ですが――全体的な印象として、終盤に向かうに従って集中力と熱量が増していったように感じました。言い換えれば――冒頭ではあまり迫ってくるものが感じられず。いきなりホルンはひっくり返るし(ウィーン・フィルなのに。これをやられると以降の気の持ちようが変わってしまうのも事実)、まず最初に訪れるゾクゾク・ポイントのコラールはやや期待外れ。期待が大きすぎたのが原因かもしれませんが。私の感覚として、1楽章終盤の第1主題の再帰部で、ようやくスイッチが入った、と感じました。
この日は日本ツアー2日目で、ブルックナー・プロの初日。ウィーン・フィルといえど、それ故の慣れなさといったものもあったのかと思った次第です。
なので、残念ながら、どっぷり浸る、といった感覚にはなかなかなれなかったのですが――終楽章コーダの盛り上がりで、やっとゾクゾクが訪れました。良かった!素晴らしかった!
と――今回も感じたことですが、現代の音響が美しく整えられたホールで聴くと、ブルックナーはスッキリしすぎてやや物足りない。もっとうねるような、大聖堂でパイプオルガンが鳴り響くような、長い残響時間の空間で聴き、ゲネラル・パウゼの音楽的効果を享受したいと思ってしまいます。
また、大変贅沢な比較ではありますが、ドイツのオーケストラの剛直で肉厚な響きで聴くブルックナーの方が、私の好みなのかもしれないと今回感じました。どこか甘やかで、出だしも若干不揃いなこのオーケストラの特性はブルックナーに関してはちょっと違うかな、と。少ない経験からの感想です。
にしても、この5番。循環主題の音楽ではあるものの、旋律美に乏しい主題でよくここまで築き上げたな、と。そして、ゲネラル・パウゼのなんと多いこと。スコアにマーカーで縦線を引き、箇所数を確認しようかと思ったくらい(笑)。と、これらもブルックナーの魅力のひとつ。
◇アンコール
なし。
サービス精神旺盛なウィーン・フィルであってもブルックナーではアンコールなし。正解。
マエストロの一般参賀はあり。指揮台に跳び載った際のドン!の大きな音に驚きと笑い。
◇座席
2階最前列下手側。最上の視界。

