2020年11月13日(金)尾高忠明指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団第543回定期演奏会

19時開演 フェスティバルホール

「怒涛の3日連続演奏会」第2日目。
前回記事には書きませんでしたが、今月は中旬に3日連続でコンサートのチケットを買ってしまっていました。購入した時期はそれぞれバラバラで、気が付けば3日連続。日にちが被ってなくてよかった。ジャンルも、オペラ、シンフォニー、合唱曲と異なっていたのは我ながらナイスな選択でした。
しかし、先週のウィーンフィルからわずか1週間なわけで、まるで音楽評論家のような生活です。

今月の大フィル定期は、コロナ禍以降、指揮者、曲目、座席のすべてが変更なく行われた初めての演奏会でした。

今回もマーラーで5番。思えば、当たり前のように毎月16型のオーケストラを聴けているのは、現在世界中でも稀で非常に幸運な状況ではないかと思います。

前半は英国ウェールズの女性作曲家、グレース・ウィリアムズの作品「海のスケッチ」。尾高マエストロがBBCウェールズ響の首席指揮者を務めておられた際に楽団員の方から勧められて演奏し、その後日本各地のオーケストラでも取り上げられてきた作品とのこと。
海の様々な表情ーー荒海、夏のおだやかな風景などが、解説を見ずとも自ずからわかるようなとても描写力に富んだ音楽。残念ながらウェールズには行ったことはありませんが、関西に住んでいれば瀬戸内海はもとより、太平洋、日本海も車で日帰り可能(と書くととても恵まれた環境であると改めて感じます)なので、その音楽で感じる、今までに見てきたいろいろな海を思い浮べて聴いていました。この弦楽器のみで奏でられるたっぷりとした音の波。2階席にいるのに、なぜか目の高さに波が迫っているような不思議な感覚で、後半マーラー交響曲第5番の4楽章「アダージェット」、私はこの曲に、湖もしくは凪いだ海ーーそれも夜で水面に月が映っているようなーー印象を持っているのですが、その楽曲の組み合わせの相性の良さも感じたのでした。

さて、そしてそのマーラー5番。
ファンファーレのようなトランペットで奏でられる主題で始まるこの楽曲。今回の「予習」は、バーンスタイン/ニューヨークフィル。この録音でのトランペット、まるで西部劇のような滲んだ響き(ニニ・ロッソ風?父がLP持ってました 笑)で、わぁアメリカだなぁーと苦笑しつつも、まぁこの吹き方は今回まずないだろうな、と思っていました。案の定であったのですが・・それにしても、もう少し瑕疵なく朗々と吹いて欲しかったなぁ、と。しかも2日目は見違えるように素晴らしかったらしいので、余計に残念です。と、苦言はここまでにします。

4楽章のアダージェット。静かに静かに始まって欲しいわけですが、3楽章が終わりマエストロがしばらく間を置いても、まだガサゴソ、コホン、と静まらない客席。マエストロ、更に待つ、待つ。そしてようやく真の静寂が訪れたのを見計らってタクトを上げられました。これだけで、どれほど嬉しかったことか。演奏会は音を楽しむものですが、同時に、この「人工的につくられた静寂」を楽しむ場でもあると私は思っています。なので、この真の静けさの中で紡ぎだされた弱音を聴いた時には、なんとも言えない幸福感が込み上げてきました。

それにしても、マーラーの交響曲は曲想がころころと変わり、それも楽章の途中で突然変わったりするので、なかなかついていけない。曲全体のあるひとつのまとまった印象が持ちにくいのです。でも、最近は、美しいところは美しい、なんだか変だなと思うところは変だな、のままで楽しめばよいか、と思っています。

◇AfterConcert
今回は仲間内5人で食事会。と、そのお店に尾高マエストロと大フィル事務局の方々もおられ、お店を出るのが同時だったのでご挨拶させていただき、なんとサインにも応じていただけました。とても気さくにお話ししてくださって、「コロナに負けずに頑張りましょう!」と。
現在は接触を防ぐため、「出待ち」は禁止されていますが、意外とこういうチャンスがあるのですねー。9月の沼尻マエストロに続き、今回のコンサートも演奏よりこちらのインパクトの方が大きくなってしまいました(笑)

 

タイトルとURLをコピーしました