2025年7月6日(日)グスターヴォ・ドゥダメル指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 ヴァルトビューネ河口湖2025

15時開演 河口湖ステラシアター

毎年夏にベルリン郊外のヴァルトビューネで開催されているベルリン・フィルの野外コンサート。今回初のドイツ国外での開催で、富士山麓の河口湖ステラシアターにて公演が行われました。

フェス感満載の楽曲をベルリン・フィルで聴く、最高に楽しいひとときでした。

ドゥダメル氏に因み、オルティス、マルケス(ともにメキシコ)、カステリャーノス(ベネズエラ)、シエラ(プエルトリコ)、といった中南米出身の作曲家作品と、デューク・エリントン、バーンスタイン「ウェストサイドストーリー」を緩急のバランスも巧みに並べたプログラム。

マルケス「ダンソン2番」(今でも頭の中で巡っています)含め、どの演奏ももちろん素晴らしかったのですが、特に印象に残ったのは異なるリズムが組み合わされたカステリャーノス「パカイグリアの聖なる十字架」。

中南米の作曲家によるクラシック作品は前述のマルケスを知るのみだったのですが、西洋音楽と現地のダンス音楽を融合させたこの「パカイリグア‥」は、同時に異なるリズムの別の音楽が併存する複雑なもの。このような音楽を聴くのは初めてのことで、その新鮮さと、流石のドゥダメル氏とベルリン・フィルの巧みさ——別々の音楽が主張し合う様が解像度高く提示され、耳も目も釘付けになりました。ちなみにマエストロ・ドゥダメルはすべての楽曲暗譜での指揮。素晴らしい‥。

バーンスタインの「シンフォニック・ダンス」ももちろん良かったのですが(「マンボ!」と一緒に叫んだり笑)——全体を通して、ドゥダメル氏の故郷ベネズエラほか中南米の作曲家作品の方が演奏の熱量が高いと感じ、印象にも残るものでした。

静かに終わった終曲の「シンフォニック・ダンス」。美しい演奏であったものの、フェスの締めくくりとして少々物足りない感があったのですが(盛り上がって終わって欲しい)、アンコールに楽しみが待っていました。

まず1曲目に「トリッチ・トラッチ・ポルカ」が始まり——ウィーン・フィルのお株奪い?と思うも束の間、金管によるルンバの音楽が被さってきて——先述の「パカイグリア」と同種の音楽。これは楽しい!終演後の会場での表示には「ヨハン・シュトラウス『トリッチ・トラッチ・ポルカ』 ”トリッキ・トラッキ” 」と書かれていたのみだったのですが、後から調べたところ、「エル・システマ(ベネズエラの音楽教育プロジェクト)」の専属作曲家であるポール・ドゥゼンヌ氏の編曲によるものでした。本編に続くマエストロ・ドゥダメルならではの選曲です。

そして2曲目は、本場でのお馴染み「ベルリンの風」。サビのフレーズ終わりの指笛鳴らしに参加できて嬉しい!これがこのコンサート最大の目的であったといっても過言でないくらい(笑)。座席にあらかじめ日本語ルビ付きの楽譜が配布されていたので、開演前に歌の自主練習をしていたのですが、歌詞が覚えきれなくて(暗譜で歌いたい)結局口笛参加。でも、いや~楽しかった!

さて、ここから会場の様子を少し。
開演前、コンマスの樫本大進氏が登場し、定位置につくと同時に観客に向かって ”WAVE”の煽り。事情は知らないものの隣の方に続いて3回ほど「立って両手を挙げて座る」を繰り返しました。これ、本場での「お約束」のようです。フェスの始まり。盛り上がります。

オケは弦14型。16型でないのはステージの広さによるものと思われましたが、クラシックコンサートでは珍しいドラムセットも置かれ、パーカッション類が充実。ちなみにドラムスは、楽団員のフランツ・シンドルベック氏。これが、ロックバンドのドラマーばりのキレッキレの演奏。カッコいい!意外性もあって(失礼!)目が釘付けになりました。

この会場は、古代ヨーロッパの円形劇場を模した形状で、客席はコンクリート製の階段、屋根は可動式。ステージ上には一応音響反射板が設けられていますが、基本的に残響ゼロ。PA不使用でしたが、音は十分に聴こえてきました。それに、残響がないため、客席の雑音もまったく気にならない。盛り上がってなんぼ!少々のことは気にしない。ホールで真剣に聴こうとすると生じる、主に観客由来の様々なストレスから解放されて、のびのびと楽しめました。

高原の鳥たち——シジュウカラ、ウグイス、時にはカラスの鳴き声も演奏に加わり、まさに野外コンサートならでは。
空調はないので、かなり暑かったのですが(保冷剤などの配布もあり)、時おり会場に自然の風が吹き抜けるのも心地よいものでした。

とは言え、途中倒れた高齢の方も。ただちにスタッフが運び出し、サイレンが演奏の邪魔にならないよう休憩時間に救急車を呼んでいたので、事前に入念な準備が行われていたものと推察しました。

一部に「VIP席」が設けられ、そのチケット代が10万円もすることなどから、コアなクラシック・ファンからは敬遠された気配もあったこのコンサート。しかし我が家(夫と私)では、コンサートホールで聴くよりもはるかに記憶に残る、またとない機会だと意見が一致、夫の還暦誕生日がこの4日後であったことから、記念旅行を兼ねて行くことにしたのでした。

まだ数日しか経っていませんが、これは楽しい記憶としてずっと残ると思っています。モノより思い出。

↓入口の様子

↓休憩時には屋根が開きました(富士山見えず)

↓アンコール「ベルリンの風」練習中♪

↓本家ヴァルトビューネ会場を模したテントの出店

 

余談になりますが——この前後には富士山周辺を観光。翌日の7月7日には富士山五合目(須走口)まで車で上がり、現地観光ガイドの方に「平坦な道だから大丈夫!」と強く勧められ、「小富士」まで往復1時間のハイキング。そこからの眺めが絶景との富士山頂はあいにく見れませんでしたが、「令和7年7月7日」の「参拝証」をゲットしました(QRコード読み取り)。ちなみにベルリン・フィルで頭がいっぱいで、翌日のゾロ目にはこのときまで二人ともまったく気づいておらす(笑)。

こちらもよい記念になりました。

 

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