2019年11月15日(金)ズービン・メータ指揮/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

19時開演 フェスティバルホール

ついに行ってしまいました。ベルリン・フィル。

中学生の頃初めて自分で買ったクラシック音楽のカセットテープがズービン・メータ指揮「惑星」。亡くなった父の生前の希望で葬儀にかけた音楽は「英雄」の第二楽章「葬送」。
 なにかとゆかりのあるコンサートで、これは行かなくては!と考えたのは、高額チケットに対する自分への「言い訳」。言い訳をいろいろ並べてはみるけれど、結局のところ「ベルリン・フィルだから行く」のです(笑)

「ドン・キホーテ」と「英雄」。
プログラムの妙。
英雄を妄想した「ドン・キホーテ」。
皇帝に即位したナポレオンに激怒したベートーヴェンが献呈を取りやめたというエピソードのある「英雄」。ナポレオンの末路と、創作とはいえドン・キホーテの末路はなんだか似ているように思うのは穿ち過ぎでしょうか。

交響詩「ドン・キホーテ」。
こういう標題音楽の演奏会では、「今この場面ですよ」的に字幕を出してくれると助かるなぁといつも思うのです。実際、コンサートをTVで放映する場合はキャプションが出ますよね。
 クラシック音楽ファンには記憶することに長けている方が多いですが、すべての場面(変奏)を覚えて聴いている人はごく少数なのではないでしょうか。なので、解説的に字幕を出してもらえると、鑑賞の度合いがより深まると思うのです。
 とはいうものの、こういったコンサートで字幕は期待できないので、ネットで調べた資料でそれなりに「予習」していきました。

・・が、結局無駄でした。いえ、最初はどうにかついて行っていたのです。しかし残念ながら次第に記憶が混濁してきたのと、なにしろステージから立ち上がってくる冴え冴えとした音の素晴らしさに耳を奪われ、今ここで記憶を引きずりだすことに頭を使うことよりも、この瞬間、今鳴っている音楽を、音色を聴くことに集中することの方が重要!と、とにかく聴くこと自体を楽しむことにしました。

それに、この壮麗な大編成のオーケストラ、煌びやかな楽器とそれを奏でるほぼヨーロッパ系の人たち、その上に日本語の字幕がばーっと出るのはなんだか珍妙な景色になるなぁ、とも思ったのでした。

20分間の休憩を挿み、「英雄」
前半のドン・キホーテだけで至福の音楽体験でしたが、その上ベートーヴェンのシンフォニーが聴けるというこの幸せ!

と、ホワイエからホールに戻り、ステージを見ると、「えぇー、管楽器が少ないー!」と。
「ドン・キホーテ」から比べるとほぼ3分の一。中央にまとめられた感じで管楽器が縦に並んでいるさまは、まるでモヒカン刈りのようでありました。
百聞は一見に如かず。頭ではわかっていても、実際に見るとこんなに少ないのだと改めて実感しました。

しかし、これだけの編成で、大迫力の音楽。ベートーヴェン偉大なり。
下手側の座席だったので、下手側に配置されたコントラバスの重低音がよく聴こえ、その響きは客席側面の反響板を震わせながら伝って上がってきているように感じました。ベルリン・フィルの特色でもある低音楽器の重厚な響き。贅沢な体験でした。

視覚的な感想として、とくに4楽章のフーガ。主題を受け持つパートの移り変わりが見た目にわかり、これは面白かった! こんなこと初めてだなぁ、なんで今まで気が付かなかったのだろう?と思いましたが、これは3階席でかなり俯瞰的に見下ろしていたからだと途中気が付きました。チケットが高いがゆえに、少しでも安い席を、と普段のコンサートではあまり座ることのない上の方の席に座ったことで得たことでした。それにこのホールの場合、音響自体は、最上階が一番良かったりするのです。

ズービン・メータ、杖をつきながらどうにか自力で歩いて指揮台に上がっておられましたが、指揮そのものはまったく衰えを感じさせないものでした。キャリアの終わりころになってしまったけれど、彼の演奏をこの目で見ることができて、聴くことができて、良かった!きっとこれが最後!と思っていたのですが・・来年はスカラ座を率いてまた来日されるそうです(笑)

◇アンコール なし
「英雄」のあとでは蛇足だし、マエストロの出入りの痛々しさを思うと、なくて正解。でもなんとなく淋しい。

◇座席 3階2列目下手側
コンサートマスターは後姿しか見えないものの、第二コンサートマスターの樫本大進氏はよく見えました。しかし、3階中央部分の1列目から3列目がほぼ空席!金額設定が高すぎたのか、2日連続公演のためか、はたまたウィーン・フィルと公演日が近すぎたからか?
ステージからはぽっかりと空いた赤い座席スペースがどのように映ったのでしょう?
開演前、演奏者のモチベーションが下がりませんように!と祈っていました。杞憂に終わりましたが。

◇その他雑感
プログラムなし。欲しい人は2,000円払って買うべし ←これはないだろー!と。
ウィーン・フィルはプログラム入ってました。
2,000円もする豪華プログラムはモノを増やしたくない向きには無用ゆえ購入せず。
演奏は素晴らしいけれど、このあたり、チケットの価格設定も含め顧客満足を考慮したコンサート全体のあり方をもう少し考えた方がよいのではないかと感じました。
スポンサーの龍角散提供の「龍角散ダイレクト」は、のど風邪真っ最中の身には嬉しかった。

タイトルとURLをコピーしました