19時開演 フェスティバルホール
今回の大フィル定期は、尾高マエストロならではの「オール・エルガー・プログラム」。

エルガー作品の中でも演奏機会の少ない作品で構成されたクラシック通好みのプログラムでした。
1曲目はエルガー夫妻の結婚3周年記念として書かれた「弦楽のためのセレナード」。穏やかな幸福感に満ちた音楽で、弦の艶やかな透明感が印象的。心が浄化される思い。
2曲目は、歌曲集「海の絵」。当初ソリストのアンナ・ルチア・リヒター氏の降板により、林眞暎さんが代演となりました。
林眞暎さんは、昨年の関フィル第九のソリスト。なので私としては嬉しく、事務局の方からお詫びのお電話をいただいた際にもその旨お伝えしました。後からプログラムを見ていたところ、今月23日の大フィルLvBチクルスでの第九ソリストを務められるそうで、そこからの依頼だったのかと推測しています。
前置き長くなりましたが、かなり音域の低い、コントラルト向きのこの作品に眞暎さんの声質は合っており、このような声の持ち主だったのかと、改めてその魅力を知ることができました――第九のアルト独唱は聴かせどころが少ない上、昨年の関フィルの第九では、鈴木優人マエストロの意向でソリストは出番直前に袖から登場するという演出だったため、より存在感が希薄。正直実力のほどもよくわからなかったのです(リハーサルでの挙措から察するに意外と面白キャラ?)。
声量も申し分なく、尾高マエストロのオーケストラ制御の巧みさも相俟って、常に歌が前面に出ており、その表現力と共に深い美声を堪能しました。作品に沿った大海原を思わせる濃いブルーのドレスが長身に映え、舞台姿も美しい。カルメンやデリラでも見てみたい方です。
と、ひとつ残念だったのは、字幕がなかったこと。暗い客席ではプログラムの対訳歌詞は見えないし(そもそもゴソゴソはご法度)、せめて5曲それぞれのタイトルだけでも出してもらえれば、より深く鑑賞できたのではないかと思っています。
後半は交響曲第3番。
エルガーの最晩年にスケッチのみが残されていたものを、後年アンソニー・ペイン氏が補筆完成させたもの。尾高マエストロ/札幌交響楽団での録音があり、予習ではこれを聴いていました。
冒頭の主題(空虚4度と空虚5度)や第4楽章のファンファーレなど耳に残るフレーズもいくつかあるのですが、パーセル「アブデラザール」に似た箇所や、どことなくワーグナー(パルジファル、ワルキューレ)を彷彿とさせる箇所もあったり。どこまでがスケッチとして残っていたのか、興味深いところです。
堅固な印象の壮大な楽曲。どっしりとした「英国の伝統」を感じるのは、途中にテンポの揺れが少ないせいでしょうか。それゆえ全体的にやや冗長さを感じたりも。
交響曲で気分が変わるのがスケルツォですが、この作品ではそのスケルツォが短調で諧謔味がなく、逆に薄く入るタンバリンのトレモロに不安を煽られる心境になったり。
最も印象的であったのは、曲の結びが銅鑼の一打であったこと。黄泉の国から響いてくるような金属音とその消えゆく残響になんというか「人生の終わり」のようなものを感じてしまいました。
なんとも不思議な味わいの交響曲。これは今後も記憶に残り続けるであろう貴重な音楽体験でした。滅多に聴けない楽曲のよるプログラム。定期演奏会ならではの楽しみでもあります。

◇座席
2階下手側最後列。
先月と同じく最後列にも関わらず視線の先が空席で視界良し。しかも両隣席の方はとても熱心に聴かれており、(先月とは異なり)良好な環境でした。

