14時開演 ザ・シンフォニーホール
ジョン・アダムズのピアノ協奏曲”Must the Devil Have All the Good Tunes?”(悪魔はすべての名曲を手にしなければならないのか)
ソリストに人を得た素晴らしい演奏。感動的な鑑賞体験でした。
角野隼斗さんを生で聴くのは初めてでしたが、いやー素晴らしかった!
この作品は2018年に発表された新しい作品で、リズムと和声進行が強調された音楽。ジャズのようにも聴こえるのですが、そのソリストがジャズも演奏する角野さん。説得力あります。
黒のプルオーバーの衣裳で舞台に現れた姿は、クラシックではなく、ジャズピアニスト。
細身の体にはビート感が漲り、そのカッコよさに開始数秒で悩殺。背中がゾクっとし、ロマン派の作品でもないのにウルっとしてしまいました。低音の音量も迫力があり、連続する和音のキレはよく、なんといっても指がよく回ること!タブレットの楽譜をピアノの中に置いていましたが(足でタップし譜めくり)、殆ど暗譜のように見受けました。
時折左手で「1,2!」とカウントを取るのも、これまたジャズマンぽくてカッコいい!
この複雑な拍子の音楽、タテの線がずれたら瞬時に崩壊しそうなのですが、飯森マエストロの精緻な指揮でビシっと合ったオーケストラの快いこと!
この指揮者でこのピアニストで、今ここで聴けている幸せ。そう何度も感じることのない至福の時間でした。
この作品、予習の段階で聴いた時には「面白いな」と思った程度で、特に期待するものではありませんでした。先月のプロコフィエフ2番の方が、曲調としても超絶技巧盛り盛りな点でも余程「悪魔」的(しかも100年以上前に書かれている)だと思っていたくらいです。
しかし——「悪魔」は置いておくとして——この日のような演奏で聴くと、この作品の魅力に取りつかれてしまいます。「ミニマル・ミュージック」ではない、と作曲家は語っているそうですが、ピアノパートだけでなく、低音で繰り返されるリズムやら、ゲネラル・パウゼ的に何度も現れるユニゾンのD音やら、今も脳内再生が繰り返されています。
さて、前半だけでもう大満足だったのですが、後半はリヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」。
この日はパシフィック・フィルハーモニア東京との合同演奏で、舞台の上にずらりと並ぶオーケストラは壮観。
しかし・・何度も書いていますが、R.シュトラウスは少々苦手。今回は標題音楽ということは一旦忘れ、何も考えずに聴くことにしました。ぼーっと聴いていると、栄光の予感→途中山あり谷あり嵐ありはするものの→栄光に包まれ最期を迎える、という風にも聴こえ、これも「英雄の生涯」に思えます。
それにしても、大音量で煌びやかで、様々な楽器が登場し、何度も咆哮が繰り返されるファンファーレ(セブン、セブン、セブン~♪ に聴こえる笑)、贅沢な鑑賞体験でしたが・・この押し付けがましい感じ、やっぱり苦手かも?笑
◇ソリスト・アンコール
カプースチン:8つの演奏会用エチュードOp.7より間奏曲
アンコールは要らないくらい満足していたのですが、この選曲のセンスの良さよ!
◇その他
角野さんの人気でチケット完売だったこの公演。普段クラシックを聴かない「かてぃん」ファンが多いのかと思っていましたがそうでもない雰囲気で、曲が終わった後の静寂も保たれ、ガサゴソ音も聞こえない(オケ音量も大きかったけど)よき聴衆でした。