2024年8月22日(木)藤岡幸夫指揮/関西フィルハーモニー管弦楽団 Meet the Classic vol.48

19時開演 いずみホール

第一部がオペラ・アリア・セレクションで、第二部がレイクエムという組み合わせのプログラム。フォーレのレクイエムで登壇させていただきました。

フォーレのレクイエムは合唱を始めて2年目の夏に歌い、今回は2回目。前回はアルトで歌ったのですが、終曲 ”In Paradisum” のソプラノ・パート・ソロが羨ましすぎて(アルト含め他の3パートは完全なるバックコーラス)、いつかソプラノでリベンジしたい、と密かに思い続けていた作品でした。

なので、今回関フィル合唱団で歌えるのはとても嬉しかった。のですが——独特の難しさがある作品で、音域はまったく高くないのに(最高音でG)、音が上がらない、もしくは下がりすぎる。天国的な音楽ではあるのですが、歌うのには大変苦労する作品でした。

とは言え、藤岡マエストロ、バリトン・ソロに大西宇宙氏、パイプオルガンに冨田一樹氏、そして会場はいずみホール、と現在望みうる最上のシチュエーション。その幸運を噛みしめつつ音程に最大の注意を払いつつ笑顔を忘れないようにしつつ(マルチタスク)歌わせていただきました。とりあえず大過なく終えられたと思ってはいますが——後日、マエストロのTV番組「エンター・ザ・ミュージック」で放映されるので、答え合わせはそれまで待つことにします。

ところで——今回は、ジョン・ラター校訂による「原典版」での演奏でした。これは、残された資料を基にフォーレのオリジナル版の再現を試みたもので、ヴァイオリン・パートがなく(”Sanctus”および”In Paradisum”にソロ・ヴァイオリンあり)、管楽器もファゴット、ホルン、トランペットのみの小編成オーケストレーション。

ちなみに、よく演奏されているヴァイオリン・パートありの版は、フォーレの弟子が後に手を加えたもので、「第3稿」とされています。前回歌った時はこの「第3稿」だったようですが、当時はそんなことを知る術すら持っていませんでした。

聴きに来てくださった方からは、ヴァイオリンがないことにより合唱が前面に出て、合唱が主役なのだと実感した、との感想を頂戴し、なるほど、と思った次第です。

さて、ここからは私自身の感想を付け加えますが、まずはいずみホールならではのパイプオルガン。以前センチュリー定期で聴いたサン・サーンスの交響曲第3番での演奏が素晴らしかった冨田一樹さん。その冨田さんの奏でる荘厳かつあたたかい音色が降り注ぐ環境で歌えたのは幸せでした。オルガン横で歌われたソプラノ・ソロ”Pie Jesu”、安川みくさんのクリスタルガラスのような美声。天国を感じました。

そして、なんといってもやっぱり大西宇宙さん。
第一部のオペラ・アリアのリハーサルを客席で聴かせていただいたのですが、美声と声量、演技力、どれも素晴らしく、それを聴いた後で迎えた合唱本番は、同じ舞台の上にいることが不思議に思えるくらいでした。

これまで私が鑑賞したご出演のオペラでは、題名役は言うに及ばず、端役でもメインキャストを食うくらいの存在感(マイスタージンガーのコートナーは凄かった)だった宇宙さん。実はこの日の客席の集中度は非常に高く、レクイエムが終わった後の静寂も完璧だったのですが——これは第一部で聴衆を圧倒した宇宙さんが第二部でも舞台に居ることで生み出されたものだったのではないかと推測しています。

といったようなことで、鑑賞したオペラのみならず、自分自身が登壇した演奏会の印象さえも宇宙さんに大部分を占められてしまっています。あれれ?(笑)

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