2023年12月9日(土)鈴木優人指揮/関西フィルハーモニー管弦楽団「第九」特別演奏会

14時30分開演 ザ・シンフォニーホール

今年も「第九」で登壇しました。
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今回の指揮者は関フィルの首席客演指揮者に就任された鈴木優人マエストロで、昨年から楽しみにしていたのですが、いくつもの学びや発見がありました。

通常例年の第九は、練習時間短め、オーケストラと合わせるのは当日のゲネプロのみ、とルーティンワーク的な扱いであったりするのですが、今回は臨時団員を募集し、練習時間も多く取り、かなり力を入れた取り組みで、私も再度楽譜に向き合いました。

そして、マエストロ練習時にも様々に学びがありました。
印象的だったのは、「二重フーガは『分断していたものが組み合わさる』ということを示している」との説明。第九を歌い始めて15年になりますが、これは初めて聞くことで、深く納得するとともに目から鱗の落ちる思いでした。

また、フーガの667小節からのソプラノは、「フーガとは関係のない旋律なので鼻歌のように軽く歌って(次の “Seid” に備える)」との指示も同様にストンと腑に落ちると同時に、歌いやすくもなりました。バロック音楽でフーガに精通し、また作曲家でもあるマエストロならではの視点と説得力。

このような理論的な楽曲解説は、指揮者に期待する大きなもののひとつで、私の大好きなジャンルでもあります。ある意味、本番での演奏以上の収穫であったとも思っています。

さて、演奏についてですが、ソリストはバッハ・コレギウム・ジャパンでお馴染みの「チームSUZUKI」。まずバリトンの加耒徹さんが素晴らしい!朗々と響き渡る声は余力十分、装飾音も加えられバロックのアイデンティティを思わせるものでもありました。

澤江衣里さんの透明感と声量を備えたソプラノも素晴らしく、コーダのMaestosoでは合唱の前で一緒に歌ってくださって最強の助っ人。これは客席で聴いていても効果的だったとのことでした。カウンターテナー(アルト)の久保法之さんは、BCJのオペラ「リナルド」での透明感が印象的で楽しみにしていたのですが、私の位置からは遠く十分に聴こえなかったのは残念。

対向配置のオーケストラに合わせたソリストの並び「SBTA」は昨年鑑賞した読響の第九と同じ。読響での合唱は「STBA」でしたが、今回は合唱もソリストと同じ「SBTA」(これは「スブタ」と呼ぶのだそうです笑)。なのでソプラノの私からは久保さんが遠かったわけです。

合唱団員としては、今回4年ぶりにマスクなしの第九で、オルガン席ではなく舞台上での歌唱。私自身は「第九はやっぱり難しい(苦しい)」で、練習時には限界を感じて落ち込んだりもしましたが、本番はマエストロの熱い指揮で、充実感を持って歌えました。チケットは完売で、ほぼ満席のお客様に囲まれ、終演後の割れんばかりの拍手が嬉しかった。これだから合唱はやめられません。

ところで今回、私は随分と遅ればせながら第九のオーケストラ・スコアを購入し、楽譜を見ながらCDを聴く、ということをしてみました。曲を「読む」ことによって、色々と「発見」がありました(初めて知ったことは「発見」笑)。

何を今さらの初歩的事項ばかりですが——最大の発見は2楽章のスケルツォがものすごく速い3拍子だということ(ずっと2拍子(8分の6)だと思っていました)。リピートの入る位置なども発見で、当日舞台上では目の前のコントラバスのパート譜を凝視、パート譜にはリピートがついてないのだと(めくり返しなし)これも発見。オケ経験者の方には笑われるような話ですね。

と、個人的には楽曲の理解が一段階深まった感のある第九でした。
本当はもっとスコアを読み込んで臨みたかったのですが時間切れ。来年に持ち越し?

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