14時開演 いずみホール
毎年恒例いずみホールでの森麻季さんのリサイタル。今年はパイプオルガンの冨田一樹さんとのジョイントで行われました。
いずみホールのパイプオルガンを堪能でき、森麻季さんの美しい歌声も聴けた充実の演奏会でした。
バッハの「トッカータとフーガ」から始まり、いきなり掴まれる演奏会。この作品、冒頭部分は効果音楽として(或いは「鼻から牛乳」?)超有名ですが、全曲通して聴いたのはたぶん初めてで、それだけでも貴重な体験でした。
その後、下手側のオルガン脇に森さんが登場され、お二人のMCが入り、同じくバッハの「主よ人の望みの喜びよ」。森さんの立ち位置はずっとこの場所で、ステージがまったく使われない、という異色の演奏会でもありました。
曲目は、バッハなどの有名なオルガン作品と翌日から12月ということで、クリスマス・キャロルなど、よく知られた親しみやすい作品での構成となっていました。
印象的だったのは、前半最後のフォーレ「レクイエム」の「ピエ・イェズ」。
フォーレ「レクイエム」は、今年8月関西フィルのコンサートで、同じくいずみホールにて冨田さんのオルガンで歌いましたが、頭上から降ってくるオルガンの音に感激しつつも、その演奏姿は当然ながらまったく見えなかったので、今回見ながら聴けたのは嬉しかったです。
森麻季さんの透明感溢れる美声。曲の結びの部分で、オルガンとまっすぐに伸ばした声のピッチがぴったり一致していたのには目を瞠りましたが、オルガンが消えた直後にわずかにヴィブラートをかけながら消えていったその歌唱技術とセンスに感嘆。声が美しいだけではなく、芸術性も高い。ついでながら見た目がお美しいだけでもないのです。と言いつつも、前半では白のタイトなドレス、後半では透け感のある水色のドレスが美しく、やはり見た目でも楽しませていただきました。
後半で印象的深かったのは、オルガン独奏のバッハ「前奏曲とフーガ ハ長調」。曲の冒頭ではペダルのみの重低音でハ長調の和音が鳴り響き、少々違和感。と、自分の頭の中には(オルガンの)重低音=短調、という固定観念があったのだなぁ、と気づきました。
バッハのフーガ、というと、以前アンデルジェフスキの「平均律第二巻」のリサイタルで、頭の中が主旋律の追っかけっこになってしまい(4つの声部を弾き分ける技術がすごい)、たいへん頭が疲れた、という若干トラウマな記憶があったのですが、残響が多いオルガンで聴くと和音の方に意識が集中したのか、響きをあるがままに受け入れられたように思います。
また、冨田さんご自身の作曲による「『ひいらぎ飾ろう』による変奏曲」では、初めて聴くオルガンの多彩な音色(クラリネットの音がしたのには驚きました)も楽しめました。
アンコールではバッハの「小フーガ ト短調」。最初と最後、オルガンの超有名曲で楽しませていただきました。森麻季さんのシューベルト「アヴェ・マリア」ももちろん美しかった!
——実は先日のラトル/バイエルンをまだ引き摺っていて、この日の予定がオーケストラとは異なるジャンルの演奏会で良かった、と思いながら出掛けたのですが、まったくその通りでした。別のお部屋に心地よく納まってくれた、素敵な演奏会でした。
◇アンコール
バッハ:フーガ ト短調 BWV578「小フーガ」
シューベルト:「アヴェ・マリア」
◇座席
R列中央ブロック
ほぼ満席だったのに、前2席が空席。またしても幸運。
オルガンとほぼ同じ高さで見易い。