14時開演 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
濱田芳通氏と古楽器演奏団体アントネッロによるバロック・オペラ。
客席最前列と同じ床レベルにオーケストラが並び(仕切りのないオーケストラピット、といった感じ)、舞台で演唱という、オケも歌手もよく見える形式での上演。バロック音楽と中ホールの芝居小屋的雰囲気とがマッチした、ひと味違うオペラでした。
濱田芳通氏とアントネッロは、一昨年の「メサイア」が素晴らしく、あの自由自在な音楽の楽しみを再び!との大きな期待を持って出掛けました。
なのですが、残念ながらやや期待外れ。
その理由のひとつは、何名かのキャストが、オペラを歌うのに適しているとは思えなかったこと。バロック独特の歌い方、というのを差し引いても不足を感じてしまう歌唱で、人物を演じきれていない感があり——歌声に眠ってしまう冥界への渡し守カロンテ同様、かなりの時間を居眠りに割いてしまいました。
とはいうものの、素晴らしい演唱を聴かせてくださった歌手も複数。エウリディーチェの友人で、彼女の死を告げに来るメッサジェーラ(使者)のカウンター・テナー彌勒忠史氏は黒魔術師のようなド迫力の扮装(女子にこんな友人おらんやろ?)と歌唱とで、カーテンコールでは一番の喝采を受けていました。他、物語の始まりを告げるムジカおよび冥界の王妃プロゼルビナの2役を担う中山美紀さんの艶やかさと安定感のあるソプラノも美しいものでした。
舞台は中央に石造りのアーチがあり、その後ろの背景はプロジェクションマッピング。幕ごとの状況により背景が移り変わる、手の込んだ造りで、終盤オルフェオとともに彼が持っていた琴も天に召され、アーチの中央に据えられて光を放つ様は印象的でした。
衣裳は古代ギリシャに即したもので、牧人たちがその扮装で演唱するのですが——これがなんとも「そのまま東洋人」で、もう少しヘアメイクで寄せてもよかろうに、と思ってしまいました。この辺りも入り込めなかった要素のひとつです。
音楽的な工夫も随所にちりばめられていたようですが、私の不勉強に加え、前述のようなことが気になってしまって、器楽についてはあまり追えず。
オペラとしての完成度を高めるためには、外部から実力ある歌手を招くべきだったのでは?と感じてしまったプロダクションでした。
とは言っても、このバロック特有の音楽はやはり魅力的。継続的に聴いていきたいと思っているので、次に期待します。
◇座席
M列上手通路側。
視界が開ける良席でした。