15時開演 スタインウェイ&サンズ大阪
昨年9月、御堂筋にオープンしたスタインウェイ直営店。東京のスタインウェイと同様に、定期的に店内の小規模なホールでサロンコンサートが開催されており、今回初めて足を運びました。この日のピアニストは、2006年生まれの朴沙彩(ぱくさあや)さん。
1時間程度の演奏会で、プログラムはバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第8番、ブラームスとラフマニノフのそれぞれピアノソナタ第2番の3曲。
このホールは想像していたよりも小規模で、目測で間口5m×奥行7m程度。正面に一段高いステージが設えられており、残りのスペースに5列×7脚の客席が「詰め込まれて」いました。
なので、最前列とピアノの間は1mほど。最前列は遠慮して2列目に座りましたが、それでもこれほどの距離感で聴くのは初めての経験。手元も足元もよく見える席で、特にソフトペダルによる音色の変化と効果がよくわかったのは収穫でした——よく座る大ホールの2階ではわかりにくいことのひとつなのです。
2006年生まれなので今年19歳。今春高校を卒業し、現在は桐朋のソリスト・ディプロマコースに在籍中とのこと。大学1回生、ですね。先日のショパンコンクール予備予選で感じたのと同様に、既にピアニストとしては完成形。研鑽や環境はもちろんのことですが、コンサート・ピアニストになれる才能というのは、ほぼ持って生まれたものなのだろうと思わずにはいられません。この日の演奏も技術の高さ以上のものを感じました。
と、しかし、この小規模の会場に相応しいプログラムであったのかは、いささか疑問で——1曲目の指慣らしバッハはまだよかったのですが、2曲目のブラームスは恐怖を感じるほどの音圧。音量的には同程度でもメロディアスなラフマニノフはブラームスよりは楽しめましたが‥。アンコールのシューベルトとショパンでホッとしながら、この会場でのプログラムについて何らかのアドバイスはなかったのだろうか?と考えてしまいました。今度はもっと大きな会場でダイナミックな演奏を聴かせていただきたい、と思った次第です。
沙彩さんは、ほぼ欧米系のお顔立ちでスラリと背が高く、舞台映えするルックス。後でお訊きしたところ、お母様は桐朋学園ピアノ科教授の朴久玲氏(この日会場に来られていました)で、お父様がロシアの方とのこと——納得です。
さて、ところで、この日のもう一つの目的は、スタインウェイのショールーム。
Webでのリサイタル申し込み記入事項に「試弾の希望」があったので、「希望」にチェックを入れて送りました(予約なしでは試弾できないとのこと)。実際に何か曲を弾いたわけではないのですが(弾く勇気なし笑)、和音やアルペジオを鳴らす程度に「触らせて」いただきました。
もちろん、これだけではよく判らなかったのですが——端の方に、スタインウェイのリーズナブル・ブランドの「Boston」があったので、こちらも同様に触らせてもらったところ——親しみやすい弾き心地と鳴りの良さで、ちょっと心を掴まれてしまいました。
この「Boston」は、スタインウェイの設計により、カワイの浜松工場で作られているものだそうです。ちなみにお値段はスタインウェイの5分の1ほど。といっても十分高価なのですが、スタインウェイのお値段を見た後では随分お安く感じてしまいます(笑)。
スタインウェイは、最も小型のもので現在1,700万円程度。近年木材が減ってきていることに加えてウッドショックもあり、その他材料工賃の上昇、更に為替の影響もあり、どんどんと高額になってきているとのこと。また、今まではアジア方面への納入はほぼハンブルク製であったものの、近年はニューヨーク製が増えてきているといったことも教えていただきました。
といったことで、新たな情報も得られた充実のひととき。パンフレットもいただいてきて——半笑いで眺めています。
◇アンコール
シューベルト:楽興の時 第3番
ショパン:エチュードOp.10-8