2025年9月26日(金) トーマス・ダウスゴー指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団第591回定期演奏会 クラリネット ダニエル・オッテンザマー

19時開演 フェスティバルホール

約半年ぶりの大フィル定期。
今回は、オール ニールセン プログラム。

ニールセン作品はほぼ聴いたことがないので、よい機会だと思い足を運びました。
指揮のダウスゴー氏はニールセンと同じデンマーク出身、独奏クラリネットのダニエル・オッテンザマー氏は現在大フィルのアーティスト・イン・レジデンスかつニールセン国際コンクールの受賞者でもあり、最強の布陣ともいえる演奏会でした。

オッテンザマー氏の演奏は、今年6月にトリオを聴いた際の印象が今回のニールセンのクラリネット協奏曲にぴったりとくるものがあり、大変楽しみにしていましたが、生で鑑賞すると期待をはるかに凌ぐ名演でした。

低音のまろやかで大きく拡がる音、高音の弱音も細い芯が残る(空気音がしない)音質の安定感。速いパッセージで駆け抜けるテクニック。ニールセンのよくわからない(失礼)音楽をいったい何を頼りに暗譜しているのだろう?という疑問と感嘆の念を抱きつつ(恐らくコンクールの課題曲として若いころから取り組まれているのでしょう)、オペラ歌手も顔負けの大きな仕草で表情たっぷりに演奏する姿にほれぼれとしてしまいました。

この作品は編成が小さく、弦5部とファゴット、ホルン、それにスネアドラム。このスネアドラムはやはり「軍隊」を想起させるもので、時に警告音のようにも聴こえるクラリネットの音色と相俟って、全体的にきな臭さが漂い——つい現在の世界情勢にも思いが及んで、ある種の緊張感を持って聴いてしまいました。いつまで経っても争いが止まない世界——そのような「普遍性」はあるべきものではないと思いつつ。

後半の「不滅」。
この作品、交響曲のプロットには則っているようですが、楽章にあたるものの間はすべてアタッカで繋がり、ひと続きとなっています。それもあって、何度が予習で視聴したものの、なかなか頭に入ってこない。とりあえず、後半で2組のティンパニが対決するのが特徴ということを把握。双眼鏡でティンパニ奏者のマレット交換などに着目しつつの鑑賞。

前半のオッテンザマー氏と同様に、マエストロはこの作品を自家薬籠中のものとされているのでしょう、暗譜で実に集中力のこもった演奏でした。

オーケストラが超集中したときに感じる、弦のつややかな一体感。これを久しぶりに体感しました。これだけでもこの演奏会に来た甲斐ありと感じるものでした。

大変充実したオール・ニールセン・プロだったのですが、惜しむらくは序曲「ヘリオス」。日の出から日没まで描いた、描写力に富んだ作品で、日没後の水平線を示す末尾のコントラバスのトレモロは印象的。しかし首席不在のホルンが不調で少々残念。定期一日目の最初の演奏だったからでしょうか。

◇ソリストアンコール
ニールセン:カデンツァ No.3
絶美の演奏。どうやったらあの弱音を「芯のみの音」で吹けるのでしょう?

◇座席
2階下手側最後列。双眼鏡率高く、オタク・エリアと認識。

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