2023年4月20日(木)秋山和慶指揮/日本センチュリー交響楽団第272回定期演奏会 ピアノ高木竜馬

19時開演 ザ・シンフォニーホール

今季初のセンチュリー定期。
モーツァルトのピアノコンチェルトとベートーヴェンの「英雄」という王道プロ。
「英雄」は近衛秀麿編曲の珍しい版での演奏でした。

モーツァルトのピアノ協奏曲で演奏されるのは20番台が多い印象で、9番「ジュノム」は今回予習するまで聴いたことがありませんでした。

なので例によって下調べしたところによると、モーツァルトが21歳の年にフランス人の女性ピアニストに献呈した作品で、「ジュノム」とはフランス語で若い人(Jeune homme)の意。彼女の父親は有名な舞踏家ジャン=ジョルジュ・ノヴェール。しかし彼女自身の名前が不明であったためこの愛称で呼んだとのことで、これは2004年に音楽研究家ミヒャエル・ローレンツが発見したことなのだそうです。それまでの長い間、献呈を受けたのが具体的に誰であったのかは不明だったとのこと(会場で受け取ったプログラム解説には、現在でも誰のことか詳しいことはわかっていない、との記述がありましたが)。

英雄とのカップリングでの「変ホ長調」プロ。
モーツァルトの番号付きピアノ協奏曲全27曲のうち変ホ長調は3作品ありますが、当初予定のソリスト小林愛実さん=「若い女性ピアニスト」に因んでこの曲が選ばれたのだろうと推察しました。

愛実さんの代演は高木竜馬さん。
以前佐藤晴真さんのリサイタルでお聴きし、コンチェルトかリサイタルでも聴きたいと思っていたので嬉しかったです。

モーツァルト自身がよく演奏していたというこの作品はカデンツァ部分が長いのですが、その分、竜馬さんの端正で美しいピアノを楽しめて至福の時間でありました。

後半は今年没後50周年を迎える近衛秀麿編の英雄。ひと言で表すなら「オケ部と吹奏楽部の合同演奏会」でしょうか。
とにかく管楽器が多く、下記の編成でした(右は通常の本数)
フルート5←2
オーボエ4←2
クラリネット4←2
ファゴット4+コントラファゴット1←2
ホルン6←3
トランペット4←2
テューバ1←0

弦は14-11?-8-8-6
しかしもう少し頑張って16型とした方が管楽器が多い分、バランスが良かったのでは?とも感じました。

現代では作曲家の書いたスコアは絶対的な存在ですが、この編曲が行われた当時は指揮者が作品に手を加えることは通例だったとのこと。近衛秀麿は「どんな指揮者がどんなオーケストラと演奏しても大丈夫なように作った」と、この編曲版を指揮した朝比奈隆に語っていたそうです。

さて、その演奏ですが、オリジナルを熟知している訳でもない私などが聴くと、多少にぎにぎしい感じはするものの、特に違和感を持つものではありませんでした。ベートーヴェンを聴いていつも思う、これだけの少ない楽器でこんなに分厚い響きがするのだ、という感動がない、とでもい感じでしょうか。当日親しくなった隣席の方は「二度と聴きたくない(笑)」と仰っていましたが——確かにわざわざまた聴かなくてもいいけれど、珍しいものを聴かせていただけ、英雄自体はやはり素晴らしい作品なので、私としては満足感の高い鑑賞体験であった、と感じています。

◇ソリスト・アンコール
グリーグ:抒情小曲集 第5集 ノクターン Op.54-5
グリーグ国際ピアノコンクール優勝の竜馬さんならではのアンコール。しかしこの曲、ドビュッシーだと思い込んで聴いていました(笑)

◇座席
今季からの定期会員席は2階最前列ほぼ中央の良席。
中央なので早めに着席していたところ、隣に来られた方が「こんにちはー」と気さくに声掛けしてくださり、そのまま色々とお喋りしましたが、その方は他の周りの方々とも知り合いのご様子。どうやらこのあたりは常連定期会員エリアだったようです。その後反対側の隣席の方も交えての3人での会話は楽しく、終演後にはまたよろしく!と。
これから定期が楽しくなりそうです——と、しかしこの席は更なるクラオタ沼への落とし穴(ドボン!)なのかも?と思ったりしています・・。

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