2025年10月19日(日)セミヨン・ビシュコフ指揮/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団大阪公演 ピアノ チョ・ソンジン

14時開演 ザ・シンフォニーホール

2年振りに来日のチェコ・フィル。指揮は2年前と同じくセミヨン・ビシュコフ マエストロ、今回はピアニストにチョ・ソンジン氏を伴ってのツアーでした。

まずは、名刺代わりのスメタナの交響詩「わが祖国」より「モルダウ」。2年前にこのオーケストラをサントリーホールで聴いた際は、朴訥とした光沢を感じさせない響きだと感じたのですが、それはホールの響きによるものだったのでしょうか?この日はそれとは真逆に、透明感や澄んだ輝きを感じました。弦楽器はもちろん、管楽器も抜けのよい音で、トランペットは特に素晴らしい響きでした。

この「モルダウ」は途中に現れる舞曲のリズムが勝った印象で、アクセントを効かせてフレーズも短く切り上げているように聞こえました。よって、モルダウの主題も、滔々と流れる大河といったイメージはあまりなく、華麗な響きでありながら重さ(くどさ?)を感じさせない印象でした。

前半2曲目は、楽しみにしていたチョ・ソンジン氏の独奏による、ラヴェルのピアノ協奏曲。この作品、この1年半の間で、3名の「推しピアニスト」で聴くことができました。藤田真央、務川慧悟、そしてチョ・ソンジン。いずれも美音の持ち主です。

ソンジン氏の演奏は、どちらかというと控え目な印象を持ちました。特に何かを際立たせるわけでもなく、1楽章、3楽章は、端正でありつつ、余裕を持ってオーケストラと戯れている感。

そして、私が(誰もが)大好きな2楽章。冒頭のピアノ独奏は、かそけき音色で時にリズムを揺らし、まさにモノローグ。オーケストラが入ってくると――1stヴァイオリン以外の弦楽器が奏で始めると、その輝かしい音の重なりがあまりに美しくて、泣きそうになってしまいました。こんなに美しい音楽だったかと。聴くたびに異なる美を発見する作品です――と、この超絶美が終わると、再びおもちゃ箱がひっくり返った「ゴジラ」の3楽章が始まってしまうので、「あぁ終わらないで」とも(笑)。

休憩を挟んで、後半はチャイコフスキーの交響曲第5番。先月のスカラ座公演と同じく、この日も予習不要の名曲プログラム。

ちなみにこの日の編成は弦16型(協奏曲は1プルト(ヴィオラは2プルト?)減らしていました)。この「チャイ5」は大編成のオーケストラを聴く喜びを最も感じられる作品のひとつ。弦も管もティンパニも上手い!――と、この演奏も、「モルダウ」と同様、フレーズを短く切る印象だったのですが、これはマエストロの意向なのかそれとも近年の世界的風潮なのか。少々物足りない感もあったりしたのですが(もっとコッテリでもよかった)、なにしろオーケストラの響きが素晴らしいので、それだけで大満足の演奏でした。

マエストロのタクトが下りると(フラブラはなく笑)、盛大なブラヴォーでの終演でありました。

◇ソリスト・アンコール
ショパン:ワルツOp.3 イ短調「華麗なる円舞曲」
ソンジン氏がショパンコンクール覇者であることを示す選曲でしょうか。ショパンの中では平易な作品ですが、右手で自由に歌ったり、左手の3拍子の切り方を変えたり、と密やかな中にも工夫が凝らされた演奏でした。

◇オーケストラ・アンコール
マスカーニ:歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
スカラ座と被り(笑)。こちらは真っ直ぐ清楚に歌う、「祈りの音楽」でありました。

ドヴォルザーク:スラブ舞曲第1番
アンコール2曲の大サービス。チェコ・フィルといえばドヴォルザーク。本家の演奏。

◇座席
2階正面中央ブロック2列目下手側。ほぼいつもと同じ席。

◇その他
現在、ショパンコンクール・ファイナルの真っ最中。リアタイは殆どしていないのですが、3rdステージの演奏を聴いて、ケヴィン・チェン氏にすっかりハマってしまい、その後 1st、2ndもアーカイブで視聴。前回の同コンクールではここまで心を捉えられるピアニストはいなかったのですが(ソンジン氏は前々回の覇者)――さて、結果は如何に。10/19現在、現況メモとしてここに残しておきます。

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