2024年1月3日(水)第66回 NHKニューイヤーオペラコンサート

19時開演 NHKホール

2024年のコンサート初めは、NHKニューイヤーオペラコンサート。2019年以来5年振りに現地NHKホールで鑑賞しました。

これまでとは趣向が異なり、ゲストなし、出演者のトークなし、アナウンサーが「司会」ではなく「語り」で進めるという、新たな試みともいえるコンサートでした。またコロナ禍以降久しぶりにオーケストラがピットに入る通常のオペラ形式となっていました。

プログラムは「通好み」で、低音パート作品が多く、なんとバスが3名。バスは長年妻屋さんおひとりだけというのが固定化していたので、これは今回の大きな特徴でした。

さて、これを読んでくださっている方は、TVでこのコンサートを視聴されたことと思いますので、TVに映らなかったことについても触れておきたいと思います。

開演前に「今回は2組でひとつの舞台としているので、拍手は2組目の演奏が終わってからにしてください」と、ディレクターから説明がありました。注意事項はこれのみで、通常のオペラではマエストロがピットに入ると拍手が起きますが、観客は心得ているようで説明がなくても拍手は起きませんでした。

舞台を上下に区切って使い、上段で歌う笛田さんの「清きアイーダ」の終盤あたりに、次の出番の森麻季さんがヴェールを被って下段に登場して待機。また別の組では、下段の方でエウリディーチェを歌い終わった砂川さんはしばらく死んだままで、上段で演じられた次のタンホイザーが終わるとオルフェオ藤木大地さんに助け起こされていました。まだ録画を観ていませんが、このあたり、どのように編集されているのか楽しみです。

なお、演奏間の舞台設定時には、スタッフの声や設営の音がかなり聞こえていたのですが、アナウンサーのマイクのみONにして聞こえないようにしてあるようでした。

幕間のペルト「鏡の中の鏡」は、会場で鑑賞した感想としては、ダンスは不要、もっと音楽だけに没頭したかったと感じましたが——これもTVでの印象がどうなのか気になるところです。

TVでは、曲が始まるとタイトルと歌手の名前・役名のキャプションが出ますが、それらはなし(歌詞の字幕は舞台左右に出ます)。ですが、今回出場された歌手の方々は全員何度も生で聴いたことがあるので、プログラムを見るまでもなく声を聴けば誰かわかり、これはちょっと嬉しかったです。

今回は、びわ湖ホール声楽アンサンブルから船越亜弥さんを始め、清水徹太郎さん、迎肇聡さん、黒澤明子さん、山際きみ佳さんが重唱で出場され、実はこれが今回会場に赴いた大きな動機でした。会場でのささやかな応援。また、合唱メンバーを双眼鏡で確認するのは、まるで友人が登壇する合唱コンサートのような楽しみがありました。

船越さんのドンナ・エルヴィーラは、その前に歌われたサロメとイゾルデが重量級ソプラノだったこともあり、清らかで透明感のあるソプラノらしい美しさという点では贔屓目でなく随一であったと思います。「天国と地獄」の際に感じたびわ湖のレベルの高さを、このトップレベルのコンサートを生で聴くことで確信しました。

と、個人的には「びわ湖推し」ではあったのですが、一方で最も印象に残ったのは、やはり大西宇宙さん。
冒頭の「メサイア・ファンタジー」のソロから始まり、最後の「ドン・ジョバンニ」の地獄落ちまで、その力強いバリトンは広いNHKホールに響きわたっていました。日本を代表するオペラ歌手の方々の中にあっても、その声は群を抜く存在感。しかも見た目もカッコいいという。昨年から宇宙さんに持って行かれっぱなしです。

と、宇宙さんの地獄落ちで終わるのかと思いきや、オペラと同様に幕が下りた後の六重唱がありました(客席からはうっかり拍手が起きました)。前述のびわ湖5名の方にレポレッロ青山貴さんを加えたアンサンブル。この重唱が胸のすくような透明感で素晴らしかった!最後に残った青山さんが幕の隙間からバイバイで去ったのもチャーミング。一昨年のびわ湖での「ファルスタッフ」を思い出しました。

最後はメサイア「ハレルヤ」の合唱で終わったので、例年の「乾杯」がなく、またキャノン砲金銀テープもなく、祝祭感が薄いと感じました。元日の大地震、翌日の航空機事故によりエンディングの演出を変えたのかもしれませんが、コンサートのプログラム自体にも祝祭感はなく、まるでこの年初の惨事を予感していたかのように感じました。

コンサート自体がひとつの作品のようで、クオリティは高いと感じましたし、従来の年功序列型の無理っぽい構成もあまり好きではなかったのですが——でもやはり、新年の祝賀行事として、ニューイヤーオペラコンサートはもっと華やかで明るいものであってほしい、と思っています。

ちなみに、生放送終了後にはカーテンコールがありました。撮影OK、SNSに上げてください、とのことだったので、ここに載せておきます。

◇座席
3階上手側。パイプオルガンが真横に見える席でした。抽選なので選べず。

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