2021年3月18日(木)佐渡裕指揮/日本センチュリー交響楽団第253回定期演奏会

19時開演 ザ・シンフォニーホール

急遽指揮者が佐渡さんになったことで、大入りの定期演奏会でした。

佐渡さんの集客力は物凄いですね。
先日14日の芸文センター満席、とまではいきませんが、いつもの定期の倍の人数は入っていたと思います。
かく言う私もこの演奏会、当初から行こうかどうかと迷っており、3月20日のPAC定期のチケットを買った時点で「いくらなんでも行き過ぎでは・・」と一旦断念するも、「佐渡さんだったら行ってみるか」と変心したクチです(笑)

開演前に佐渡さんのプレトークがあり、「本来なら14日の夜にウィーンに飛ぶはずだったがロックダウンで叶わず、そこにタイミングよくこのコンサートが入った」とのこと。来れない人もいれば行けない人もいる。ちょうど3日間の練習期間も取れて、まるでパズルのピースがぴたりと嵌ったようです。

関西のオーケストラの協定で、オケのポストを持つ指揮者は他のオケの定期は振れないことになっているが、今回はコロナ禍で特例となったとのことでした。また、20数年前まだ指揮者として食べていけるか不安に思っていた時期にセンチュリーの首席客演指揮者のポストを与えられてとても嬉しかった、ということも仰っていて、定期の指揮をするのは実に24年振り、とのことでした。

プログラム前半のベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
実はこの演奏会に行きたいと思ったもう一つの理由は、ピアノ独奏が清水和音さんだったから。
ロン・ティボーで優勝されてすぐの頃だったと思いますが、父親に連れられてリサイタルに行った時のことは鮮明に覚えています。
たしかベートーヴェンのソナタだったのですが、演奏の途中、客席で子どもが泣き出したのです。で、なかなか泣き止まない。それで楽章の間に和音さん、くるりと客席の方を向き「すみません、連れて出てもらえますか」。よくぞ言ってくれた!とは思いましたが、その時ホールに張りつめた空気といったら!お陰で演奏よりもその緊張感の方が印象に残ってしまいました。
といった演奏以外のことを思い出してしまうのですが、それから40年(!)経ったこの日の演奏は、まさに「皇帝」にぴったりの貫禄のあるものでした。まずピアノの音色が美しく高音部のきらめきとともに、低音部のずしりとした安定感も素晴らしく、まさに「重鎮」の感でした。

そして、アンコールがなんとショパンの「英雄ポロネーズ」。
この日のプログラムが、ベートーヴェンとラフマニノフであったので、大ピアニストでもあった作曲家の系譜として、年代的にもその二人を繋ぐ存在のショパンが選ばれたのだろうと推察したのですが、楽曲そのものがプログラムに載せてもいいくらいの重量級、大サービスであったと思います。

20分の休憩を挟んでの・・なのですが、トイレに長蛇の列。後半の開演に間に合わないのでは、と少々焦りました。これもいつもと異なるシチュエーション(笑)

ラフマニノフ交響曲第2番。
なんといってもこの上なく美しい旋律の3楽章。これはカタルシスですね。
しかし・・この作品、ハッとするのはこの3楽章だけで、その他の楽章では次々にあらわれる主題は美しいのだけれど記憶に刻まれにくく、しかもなんとなく「ピアノ協奏曲第2番」の亡霊がそこここに立ちのぼっては消えていく印象。生で聴くのは実はこれが初めてでしたのでこの印象は覆るかな、と思いましたが残念ながらさにあらず。

それでも演奏全体の印象として、いつものセンチュリーとはずいぶん違うな、と感じました。端正で繊細な美しさを持ったオーケストラ、というのが私がいつも抱いているセンチュリーのイメージなのですが、この日は編成が大きいこともあってか外に向かってばーんと開いた、開放的で豪放磊落な印象で、全然別のオーケストラを聴いているような感覚に陥っていました。これも佐渡さんの力量のなせる技。指揮者によってオケそのものの印象が変わって見える、という今までにない面白さを感じた演奏会でもありました。

◇座席
2階正面最後列。音も視界もよし。
だけど、前の座席のお兄さん、前のめりになるのはやめてほしかったなぁ…

蛇足になりますが、当初のチラシです。日本での知名度を考えると、来日が叶わなかったことは逆転だったように思います。

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