2021年3月17日(水)齊藤一郎指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団第546定期演奏会

19時開演 フェスティバルホール

面白いものを観た!
楽しかった!
そして感動した!
そんな演奏会でした。

当初予定の指揮者、ピアニストの来日が叶わず代演となったコンサートでしたが、これが僥倖とも言える素晴らしさで、なんとも楽しく晴れやかな気分を与えてもらえました。

齊藤一郎マエストロ、実は今回初めて知った指揮者でした。
なので、大丈夫かなぁと少々案じてしまったのは、かつてこのオーケストラが「指揮者無視」演奏をしていたのを目の当たりにしたことがあったから。しかし、そんなことは杞憂に終わりました。

題して「齊藤一郎の舞」。
今回のスペイン・プログラムは「踊り」の要素が入った楽曲が並んでいたのですが、それに合わせてのことなのでしょう、指揮台の上での華麗なステップ、ジャンプ。「弾き振り」ならぬ「踊り振り」。
ダンサーのような細身のシルエットで、ふわっと跳びあがって音もなくしなやかに着地。それがサマになること!この演奏会に向けてスペイン舞踊を習われたとのことでしたが(!)もともとバレエなどの素養がおありなのかもしれません。
その指揮の視覚的な華やかさとともにオーケストラの演奏も華々しく、スペインの陽光の煌めきがホールいっぱいに広がった至福の演奏会。金色、オレンジ色、そんな色彩感に溢れていて、あぁ色が見える、と感じました。と、帰宅後改めてプログラムを取り出すと、そう、プログラム表紙で既にそれが示されていました。

大フィルさんのプログラムの色彩は、いつもその演奏会の楽曲や指揮者のイメージに合っているなと感じていますが、今回演奏を聴きながら頭に浮かんでいたのがまさにこの色彩。素晴らしいです。

色彩に関してもうひとつ。ラヴェルのピアノ協奏曲を演奏したピアニスト菊池洋子さんのドレス。「共感覚」の持ち主が「ト長調」には「青」や「緑」を感じる、というのを聞いたことがありますが、この日のドレスがまさに青緑色。彼女が感じるこの曲のカラーはこれなのだな、と演奏とは別のところで納得していました。左はノースリーブ、右袖が身ごろとつながるドレープの大胆なデザインのドレスがすらりとした長身によく映えていました。
1932年初演のこの作品、途中ジャズのように感じる部分があるのですが、プログラム解説によると、ラヴェルは「ラプソディ・イン・ブルー」を絶賛していた、とのことなのでやはり影響を受けているのでしょう。プロコフィエフやラフマニノフの作品にもジャズを感じることがありますが、これくらいの年代になってくるとクラシックがジャズに寄ってきているのかな、と最近感じています。
そしてこの楽曲の2楽章。冒頭の素朴な感じもするピアノ独奏部分はサティみたいだな、と思って聴いていたのですが・・なんとソリスト・アンコールがサティの「あなたが欲しい(”Je te veux”)」。演奏が始まった瞬間、無意識に求めていたものが提示された喜びと、菊池さんへの親近感を感じました。

プログラム終曲、スペイン狂詩曲が終わると大喝采!禁じられている ”BRAVO!” があちこちから聞こえ(叫んでくださった方、ありがとう!)、マエストロはオーケストラからも盛大な祝福を受けておられました。

思えば、ちょうど1年前の3月定期は無観客配信。そして4月、5月は公演中止。
6月以降再開されてからも曲目や演奏家の変更がありましたが、しかし、ひとつひとつの演奏会が実に印象的で素晴らしく、満足度の高いものでした。
そのシーズンの締めくくりの今回の晴れやかなスペイン・プログラム!
最高でした!

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