2021年9月3日(金)モーツァルト~歌い継ぐ、至純の音 井上道義指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 工藤重典・吉野直子

19時開演 いずみホール

小編成の大フィルでモーツァルトのプログラム。
フルート/ハープの協奏曲は天上の音楽でした。

この演奏会にぜひとも行きたい!と思ったのは、ここのところほぼ毎朝この「フルート協奏曲」と「フルートとハープのための協奏曲」を聴いているからなのです。

テレワークで出勤のストレスがなくとも、寝起きが悪いためいつも朝はだいたいユウウツ気分なのですが、そんな一日の始まりを明るい気持ちに「上げて」くれるのがこの音楽。心の支え、といっても過言でない(笑)。特に「フルートとハープ」は、「天国とはこのような音楽が流れている場所ではないか」と思うほどの至福感をもたらしてくれます。

それが生で、最高のソリストで、響きのよいいずみホールで聴けるとなると、もうこれは行かない訳にはいきません。当初フルートはウィーンフィルの首席奏者ワルター・アウアー氏でしたが来日が叶わず、しかし代演は日本を代表するフルーティスト工藤重典さんでしたので、期待の大きさは変わらず会場に向かったのでした。

そして、それは期待した以上に素晴らしいものでした。
よく「死ぬときはフォーレのレクイエムが聴きたい」などと聞きますが、私がこのとき考えていたのは「あぁ、今ここで死ねたらなんと幸せなことだろう」。フルートもハープも音色は最高に美しく、天国そのものでした。何か所かあるカデンツァも、いつも聴いているCDのものより長いヴァージョンでたっぷりと楽しめましたし、なんだか永遠にこの幸せな空間にとどまっていられるような気さえしました。

いつも弦16型の大編成で聴いている大フィルは、弦が半分の「小フィル」(マエストロ談)でしたが、艶やかな響きでとても美しかった。コンマスの崔さんと須山さんが揃い踏みで、マエストロが力を入れたプログラムだったのだろうと推察しました。

しかし、マエストロ、開演時はオケと同時にステージ入場、チューニングが終わるのももどかしくさっさと振り始める。休憩後の交響曲では、崔さんがやりかけたチューニングを無視!?して開始。そしてくるりと客席に向いた状態で曲を振り終わり(「オレってカッコいい」?笑)、客に余韻を与えない。困ったもんだ。だけど許せてしまうキャラクターの勝利(笑)

◇ソリスト・アンコール
モーツァルト8歳の作品「フルート・ソナタ ハ長調K.14」より第1楽章アレグロ

最後の全体アンコールは「かなり考えましたが、大阪のお客さんだから笑いも取らなきゃいけないし、あまり長いのも・・」というマエストロのトークに被せてオケが立ったまま「ジャン、ジャン、ジャン」。オチをつけてのお開きでした。

演奏の余韻を持ったまま帰る、という雰囲気ではなくなったのですが(笑)、しかしこのとき感じた幸福感はたぶんずっと忘れない、と思っています。

◇座席
Q列下手側端。非常事態宣言下で客入りが少なく視界が良好、なのは少々寂しいし、勿体ないと感じてしまいました。

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