14時開演 ザ・シンフォニーホール
「井上道義 ザ・ファイナル カウントダウン vol.4」のサブタイトルで、ブルックナー7番をメインとした演奏会。
前半はモーツァルト交響曲第25番で、尾高マエストロと大フィルの「モーツァルトとブルックナー」シリーズの番外編でもあるような演奏会——のはずでした。
映画「アマデウス」でよく知られる「疾風怒濤」の1楽章が終わると演奏を止めたマエストロ。指揮台から降り、マイクを持って話し始められました。マエストロならではの演出で、ここでまさかのプレトーク?と思いきや——「1楽章で止めるなんてあり得ないんだけど、僕もジジイになってきて(朝比奈さんみたいに)、持病の腎臓結石が来て・・皆さん、ブルックナーが聴きたいでしょう。大フィルの。で、早いけど、ここで20分の休憩にします」と宣言。
ということで、モーツァルトは1楽章のみで終わり、マエストロもオーケストラも聴衆もブルックナーに集中する演奏会となりました。
前半を早く切り上げたとしても、ブルックナー7番は1時間以上ある作品なので、マエストロは大丈夫なのだろうか、と心配しましたが、体調不良だとは思えない素晴らしい指揮。オケには一体感があり、客席からの雑音は殆どなく、これまでのオーケストラ演奏会で経験したことがないほどの超集中の状況が出現したのです。
といいつつも、マエストロらしい動きはあまりなく、それは作品解釈なのか体調によるものなのかは判別できませんでしたが、とにかく全楽章を通して「美しさ」のみを引き出した印象の演奏でした。
この日は「ノーヴァク版」での演奏で、2楽章の山場でシンバルが鳴らされました。これがバッチリと決まって爽快!(叩き終わった後もカッコよかった!)。シンバルを嫌う指揮者は「ハース版」を採用するそうですが、やっぱりシンバルが入った方がよい!と思える説得力でした。(しかしカラヤンは「ハース版」でシンバル鳴らす録音を残しています・・ややこしい笑)
どのパートも総じて良く、弦楽器も艶やかな束感があって美しかった。冒頭のチェロはハッとする素晴らしさでした。4月の9番で少々落胆したワーグナー・テューバは、今回は堂々とした安定の演奏。ホルンの後ろではなく、トロンボーン・テューバ後ろの配置で、この方が低音のまとまりがあってよいと感じました。
弦16型の編成で、1stヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→2ndヴァイオリンの変則型対向配置。この並びは2年前にラトル/LSO来日公演でのブルックナー7番と同じでした。「7番シフト」でしょうか?
ともあれ、最良の状況で、大好きなブルックナーの世界に浸ることができ、幸福な時間でした。
惜しむらくは、拍手が早すぎたこと!あと3秒くらい待って欲しかった!
マエストロは、カーテンコール時もジョークで車いすのジェスチャーを見せたりもしつつ、歩幅も大きく颯爽とされていました。無理をされていたのかも知れませんが、それを観客には感じさせない。美学ですね。
◇座席
2階下手側5列目。前席が小柄な女性で視界良し。
チケット完売で満席。見渡したところ男女比はほぼ1:1。ブルックナーはオジサンだけのものではありません(笑)
◇その他
チラシの裏面にあった、マエストロの声が聞こえて来そうな「らしい」メッセージ。切り抜きをここに載せておきます。