2024年9月25日(水)サー・アントニオ・パッパーノ指揮/ロンドン交響楽団大阪公演 ピアノ ユジャ・ワン

19時開演 ザ・シンフォニーホール

2年振りのLSO来日公演。

前回2022年はマエストロ サイモン・ラトルの音楽監督最後のツアーでしたが、今回は昨年首席指揮者に就任されたマエストロ パッパーノ初のツアー。そして、ピアニストはユジャ・ワン、という豪華な公演でした。

プログラムは、ベルリオーズ「ローマの謝肉祭」、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番、休憩後にサン=サーンスの交響曲第3番「オルガン付き」。

「ローマの謝肉祭」が始まった瞬間、極めて集中力の高い、生き生きとした音楽が立ち上がり、一気に引き込まれてしまいました。マエストロ パッパーノ、やはりさすがです。

2年前に初めてLSOを聴いた時には、とにかく金管楽器が上手く、そのアンサンブルが素晴らしいのが印象的でしたが、今回は管も弦も打楽器も全て上手い、と感じました。その美しく整った豊かな音色を自在に操るマエストロ、やっぱりこれですね!と嬉しくなってしまいました。このような音楽を聴くことができるのは至福の極みです。

ところで、弦の並びは、1stヴァイオリンから時計回りにヴィオラ→チェロ→2ndヴァイオリン。2年前もこの並びだったので、このオーケストラの伝統なのでしょうか。

2曲目は楽しみにしていたユジャ・ワンのラフマニノフ。
登場するまでにかなり間があったのですが、その間、ステージ・マネージャーが客席に背を向けた状態でコンマスの脇に立ち、舞台袖からの合図を受けて、オケが立ちあがるタイミングを伝えていました。これは初めて見る光景。合理的だと思いました。

さて、ユジャ・ワンの登場。
黒地に赤い模様の入ったラメの超ミニ・ワンピに15㎝くらいのピンヒール。アーティスティック・スイミングのコスチュームのようです。露出度は高いもののセクシーさは皆無(目指していたらゴメンナサイ)、引き締まった体形ゆえにアスリートのように見えました。

このラフマニノフの第1番は、演奏される機会が少ない作品で、私も生で聴くのはこれが初めてでした。2番や3番などと同じく、ロシア的な魅力に溢れ、ピアニストの技量を堪能できる作品で、特に冒頭のピアノの入りの迫力——ユジャの奏でる強烈な和音に度肝を抜かれました。やっぱり、この人は凄い‥。

そして、その演奏からは、運動神経の良さといったものを感じました。鍵盤の上を駆け巡る指は、G難度を繰り出す体操選手のよう。また鍵盤を押さえる深さによって、音の強弱や表情をコントロールしているのが見て取れたのですが、それがプログラミングされたかのように均質で正確なのです。こんな技があったのか!と驚嘆。

一方で、1楽章終盤のカデンツァ——濃密なロシアのロマンティシズムが漂う、私の大好きな箇所なのですが、ここはそこまで濃い表現にはならず——そんな気はしていたのですが、彼女にはラフマニノフよりもプロコフィエフが合っているように感じました。

アンコールは3曲!
1曲目はマエストロとの連弾で、ドヴォルザークのスラヴ舞曲。
協奏曲の前にピアノが運ばれてきた時から、ピアノの中にタブレットが入れてあり、足元にはターナーが準備されていたのですが、これはアンコール用だったようです。

以前、ロイヤル・オペラのライブ・ビューイングを観たとき、休憩中の特別映像として、マエストロがピアノで楽曲解説をするシーンがあったのですが、そのピアノがなんとも生き生きとして魅力的だったのが記憶に残っており、マエストロのピアノを聴くことができたのは嬉しかったです(少々危ういところも?笑)

2曲目以降はユジャの独奏で、白鳥の湖「4羽の白鳥」とカプースチンのエチュード。このカプースチンが凄かった。鍵盤を下まで押す間がない、といった感じの超々速弾きで、音の粒の揃い具合は絶品。マエストロは横に立ってタブレットの端をタッチして譜めくり(どうやらターナーは不調だった模様)。その親しげな様子は、可愛いがっている親戚の女の子に構いたくてしょうがない小父さん、といった感じ。微笑ましくもありました。

それにしても、カプースチンは、楽譜を目で追いながらでは弾けないでしょう、と思うような圧巻のスピード。世界的スターを、観て、聴いて堪能いたしました。

ちなみにユジャの「高速お辞儀」ももちろん生で見れました。マエストロと手をつないだままお辞儀をすると、マエストロが若干引っ張られたりも(笑)

と、ユジャで文字数を消費してしまいましたが、休憩後のサン=サーンス交響曲第3番。
今年この曲を聴くのは3回目。サン=サーンスの3番を3回(笑)

5月のモンテカルロ来日公演時の、パイプオルガンのないホールでの演奏に残念な思いが残っていたので(演奏自体は素晴らしかったはずなのですが)、これはそれを払拭してくれる演奏でした。

パイプオルガンが真正面に、しかもほぼ目と同じ高さで見えるので、こんなところからオケと絡んでいたのだ、と再認識。そしてなんと言っても、重低音でホール自体が震える快感を味わえました。やはり「オルガン付き」ホールで聴かなければ。

アンコールは、マエストロによる曲紹介があり、なんとフォーレの「パヴァーヌ」。やっぱりこの曲はコンサートの最後に置くべき——先日の関フィル定期で抱いた疑問に答えを出してくれた演奏会でもありました。

と——この後、久し振りに風邪を引いてしまって(コロナ禍以降初めて)、体調がすぐれずブログを放置していたら、かなりの記憶が失われ、思い出すのはユジャのことばかり(強烈だった)、後半はショボい感想になってしまいました。やっぱりすぐに書かなければ!(反省)

◇ソリスト・アンコール
ドヴォルザーク:スラヴ舞曲 第2集op.72より第2番
チャイコフスキー(アール・ワイルド編):白鳥の湖より4羽の白鳥の踊り
カプースチン:8つの演奏会用エチュード トッカティーナ op.40-3

◇オーケストラ・アンコール
フォーレ:パヴァーヌ op.50

◇座席
2階最前列下手側
ピアニストの手がよく見える、いつもの席。
空席が目立つ公演で、2階正面席も2列目以降はガラガラといっていい状態で、バルコニー席ではすべて空席のブロックも。チケットが高すぎた?

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