2025年7月28日(月) 2人のマエストロ、1台4手の妙技

14時開演 京都コンサートホール アンサンブルムラタ

広上マエストロと沼尻マエストロによるトーク&ピアノ連弾のコンサート。

今年1月にミューザ川崎で同様のコンサートがあったことはSNSで知っていたのですが(楽しそう!)、関西でも開催されると知り、月曜日の午後ではあるものの予定をやりくりして京都まで行ってきました。

トークとピアノ連弾が半々くらい、約1時間のゆる~いコンサート。マエストロの人気ゆえ、完売満席の公演でした。

なお、ミューザよりも前、アンサンブル金沢でのイベントとして、ストリート・ピアノで連弾したのが最初であったとのこと。

メガネを頭に上げ、楽譜ガン見で一生懸命弾くプリモの広上マエストロ。時おり空いた右手で「1、2」と指揮をされたりも。一方、ピアニストでもある沼尻マエストロはセコンドにまわり、「手綱を締めている」といった印象でした。

「初めて合わせる、ぶっつけ本番」の1曲目モーツァルト「フーガK.401」。広上マエストロが途中演奏を中断、客席を向き、「間違えた、やり直し」→「どっからやろうか?」とお二人で相談、途中から弾き直し。2曲目の尾高惇忠「小さなコラール」は、弾き終えた後、「リベンジ」でもう一度演奏。こんなコンサート、なかなかありません。

続く、ブラームス「ワルツ作品39より第15番」、バッハ「主よ人の喜びよ」、ドビュッシー「小舟にて」は、「上手く行ったら続けて演奏する」と仰っていましたが、それを上回る出来だったのか、その次のドヴォルザーク「スラブ舞曲第10番」まで4曲続けての演奏。

日本を代表するマエストロお二人が、仲良くピアノを弾いている姿を見せていただけるだけでも嬉しく、幸せな時間でしたが、途中のトークも興味深いものでした。

京響の常任指揮者を長く務められ、現在はこの京都コンサートホールの館長でもある広上マエストロ、この日は「ホスト」的な立場で話をされていましたが、びわ湖での「ワーグナー10完遂」も話題に上がり、「あれで京響はスタミナがついた」と。

京響は広上マエストロで実力が飛躍的に押し上げられたと言われていますが、沼尻マエストロのワーグナーもその一助であったのかと思いました。その後、神奈川フィルでの演奏会形式のオペラ上演にも話が及んだのですが、沼尻マエストロの「ウィーン・フィルのサウンドがベルリン・フィルとは違う魅力があるのは、やっぱりオペラをやっているからだと思う」とのご発言に深く納得。

考えてみれば、お二人ともいわゆる「オーケストラ・ビルダー」と言われる指揮者なのだと、終演後、帰る道すがら思い至った次第です。

と、連弾の最後は、中田喜直「こどものための連弾曲集」。「きらきら星」から始まる童謡をもとにした8曲からなる作品集。曲の間に沼尻マエストロが次の曲名を紹介されていたのですが、そのついでに「こっち(セコンド)がメロディのときは弱く弾いてもらえますか」とのツッコミも(笑)。終曲「汽車は走るよ」は「ゆっくり走りましょうか」で演奏されましたが、アンコールは「スピードアップで」、汽車は再び走りました(笑)。

◇座席
1階6列目下手側。視界良好。

◇その他
この日の夕方は、関フィル10月定期の藤岡幸夫マエストロの合唱練習。1日で3人のマエストロを身近で拝見。

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