19時開演 いずみホール
ポーランドのオーケストラ、シンフォニア・ヴァルソヴィアの大阪公演(「ヴァルソヴィア」とは「ワルシャワ」のポーランド語読みとのこと)。
この日と翌日の2公演聴かせていただきました。
2公演は、いずれもショパンの各協奏曲を後半に据えたプログラム。ショパンの協奏曲が後半(メイン)というのは、珍しいプログラムミングですが、ポーランドのオーケストラならではのことなのでしょう。この日は協奏曲第2番をイーヴォ・ポゴレリッチ氏の独奏で。前半はドヴォルザークの交響曲第8番。
弦12型のやや小さい編成で、いずみホールにはちょうどよい規模。交響曲の演奏が始まってほどなく、かなりレヴェルの高いオーケストラだと感じました。弦楽器、管楽器それぞれの音が明晰に聞こえてくるのです。ヴァイオリンの鋭利に響く揃った音色が美しい。先日のスカラ座の明るい響きとは全く異なるもので、オーケストラの響きにはそれぞれ個性があるものだとあらためて実感したりもしました。
イーヴォ・ポゴレリッチ氏。
現在ワルシャワではショパン・コンクールの真っ最中ですが、かつて氏がショパン・コンクールで予選落ちした際、これに憤ったアルゲリッチが「だって彼は天才よ」と言い残し、以降審査員をボイコットした話は有名で、このことにより入賞はしていないものの世界的な知名度を獲得したピアニスト。私は実演を聴くのは初めてでした。
と、休憩中に調律ではなく、誰かピアノを弾いている?と思ったら、ポゴレリッチ氏本人でした。サティのような穏やかな音楽を切れ目なく即興で弾いているのです。聴いてよし、聴かずによし。観客もそれぞれに休憩時間を過ごす、という不思議な光景でしたが、違和感はなし。しかし、やはりちょっと変わってる?と本来の演奏の前に実感しました。
さて、その演奏ですが――冒頭に大きく溜めをとったので、かなり個性的な演奏になるのだろうか、と感じたのですが、特に大きくテンポを変えたり、ということはなく、むしろ淡々と弾き進めていたように感じました。先日のスカラ座公演のチョン・ミョンフン マエストロではありませんが、ほとんど体を揺らさない。なので、古典派を弾いているような気分になったり、また曲想によるものなのか、ジャズっぽく聞こえたりも。つまり、あまりショパンらしくは聞こえなかった。
ですが、その音ひとつひとつに不思議な説得力がこもっていて、聴き飛ばせない感じがするのです。これは、やはり経験を積み重ねた巨匠の演奏だと感じました。リサイタルを聴く機会があれば、ぜひピアノだけをじっくり聴いてみたいとも思いました。
と、ポゴレリッチ氏の年齢が気になって、後から調べたところ、1958年生まれ。でピンと来たのですが、イェフィム・ブロンフマン氏、ダン・タイ・ソン氏と同い年なのですね。ダン・タイ・ソン氏は先述のショパン・コンクールの覇者でもあります。同時期に集まる才能。
ところで、この公演、ご招待いただいたのですが、客入りがあまり芳しいとはいえず。円安の影響でチケット代は高く、海外オケの来日も続くので、知名度が高くないと集客には苦戦を強いられるのでしょう。演奏レヴェルが高いだけに惜しいと感じた次第です。
◇ソリスト・アンコール
なし。休憩中の即興演奏がその代わり?
なお、協奏曲は楽譜を置いての演奏でした。