2022年4月15日(金)井上道義指揮/兵庫芸術文化センター管弦楽団第132回定期演奏会 ヴァイオリン服部百音

15時開演 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

意外なことに、PAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)の定期に行くのはこのブログを始めてから初めてでした。下野さんのブルックナー5番、佐渡さんのブルックナー8番を聴いた記憶が割と新しいのですが、それは2年半以上前のこと。年月の流れは速いです。
さて、今回は午後から休みを取って、1日目の公演に行ってきました。

オール・プロコフィエフ・プログラム。
前半は、服部百音さんのソロで「ヴァイオリン協奏曲第1番」。
超絶技巧も軽々とこなし、作品に没入したかのような集中力を感じる情熱的な演奏。鮮やかなエメラルドグリーンのタイトなドレスもよく似合い舞台姿も美しい。

1楽章の中間あたりで弦が切れてしまったのですが、瞬時にコンマスと楽器を交換し、速攻で演奏に戻っていった対応力はさすがでした。けれどやはり無念に思われていたようで、終演後の返礼時に目に手を当てて泣くジェスチャー。客席からは「そんなことない、素晴らしかった」といった趣のあたたかい拍手が送られました(私は少なくともそう思って拍手しました)。

ソリストアンコールもプロコフィエフで「3つのオレンジへの恋」をオーケストラとマエストロとの軽妙な演技付きで(笑)。道義マエストロならではの楽しさです。

後半はプロコフィエフ最後の交響曲の第7番。「辞世の句」であるかもしれませんが、ソヴィエト連邦の青年に捧げる意向で「青春交響曲」と作曲者自ら呼んでいたとのこと。明るい印象のこの作品とPACの若々しい演奏の相性の良さを感じました。

私はどうもプロコフィエフとショスタコーヴィチを聴いているうちに混同してしまうのですが、この音楽からも、そのまま「明るい」と受け取ってしまってはならない何かを感じてしまいます。ショスタコーヴィチの鑑賞でそのような聴き方が身についてしまったのか、或いは今の情勢がそう思わせてしまうのかもしれません。余談ですが、プロコフィエフ生誕の地はウクライナ東部ドネツク州(当時は帝政期ロシア領)です。

なお、4楽章の結尾は別れを告げるように静かに終わる版と、第一主題の再現で明るく終わる版の2種類があるとのことがプログラムに書かれていました。私はマエストロのキャラクターと、この色彩感あふれる演奏の雰囲気からして、おそらく後者の「明るい版」だろうと予想しましたがーー果たして予想通りでありました。

アンコールは(定期でもアンコールがありました)、やはりプロコフィエフで交響曲第1番の第3・4楽章。ラストでマエストロは得意のバレエのターン!・・が、制止がぴたりと決まらずグラつき、その憮然とした表情にまた笑わせてもらったのでした。「2024年で引退する」と宣言されてしまってーーそれはとても勿体ないことですが、このターンが決まらなかったりするのも、美学として受け容れ難いもののひとつなのかもしれないと思ってしまったのでした。

◇アンコール(前述しましたが)
ソリストアンコール:プロコフィエフ 「3つのオレンジへの恋」より「行進曲」
全体アンコール:プロコフィエフ 交響曲第1番より第3・4楽章

◇座席
2階最前列下手側。
平日の午後3時からであるにもかかわらず、7割くらいの客入り(多い)。定期が3日間開催できるのも関西ではここだけで、改めてこのホールの集客力の高さを感じました。
・・それにしても左隣のオジイサマが、右手どころか両手でゆるく指揮をするので、大いに目障り。集中力が大きくそがれてしまったのでした(怒)

◇その他
プログラムも充実していて、「おすすめ!必聴ポイント」コーナーや作曲家の簡単なプロフィールと「パーソナリティ分析」←こういうの好きです(笑)、ソリストへのインタビュー記事などもあります。鑑賞の助けになり、かつ読み応えもある内容。前述の集客力=収入あってのことなのでしょうが、このプログラムひとつ取っても「また来て音楽を楽しみたい」と思わせる仕掛けであり、好循環であると感じました。

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