2022年10月23日(日)クラウス・マケラ指揮/パリ管弦楽団

14時開演 フェスティバルホール

今秋のクラシック界の大きな話題のひとつ、若き指揮者マケラとパリ管弦楽団の来日公演。
評判に違わず、期待を大きく超える、素晴らしい演奏でした。

とにかく「春の祭典」が素晴らし過ぎて、音楽が終わった後もしばらく拍手ができないほど感動してしまい——こんな経験は初めてのことでした。

これ以上ないキレの良さ!
指揮者とオケとが一体となって発する変拍子の波動がホールの空間に満ちていて、それは演奏が終わってもまだホールの空間に残っているような気がし、その空気を感じていたくて、そして終わってしまったことを認めたくなくて、拍手をしたくなかったのです。

もちろん会場は拍手喝采でしたが、しばらくひとり呆然と固まってしまってました。

アンコールはシベリウスの「悲しきワルツ」。
春の祭典とは対照的に、マケラ氏の故郷フィンランドの森の湖面から立ちのぼる朝靄を思わせるような柔らかな響きにすっかり心が奪われてしまいました。

前半はパリ管らしいフレンチ・プロでドビュッシー「海」とラヴェル「ボレロ」。
なんといっても、ボレロを本場の演奏で聴く満足感——スネアドラムの微かな音が聴こえ始めたとき、音の源を探してしまいましたが、2ndヴァイオリンとチェロの間、つまり指揮者と対峙する位置にありました。オーケストラの中心に据えてあった訳ですね。なるほど!

ひとつひとつのソロがさすがに上手く、楽器が重なっていくときの輝かしい響きも素晴らしい。そして、ヴァイオリンが弓で弾き始めたときの、息の長いフレージングと独特のアクセントのある歌いまわし——これには「ヨーロッパ」を感じてしまいました。

なのですが、そのオケを束ねるコンサートマスターは日本人の千々石英一氏。なんだか誇らしいですね。

弦は16型でしたが、チェロが12台で低音が厚めにしてありました。
しかしこの大編成が余裕で並び、かつ音響もよいフェスティバルホールはやはり素晴らしい。このホールで聴ける幸せを感じました。・・ラトルLSOもここでやってくれればよかったのに。

マケラ氏の指揮は、なにか特に変わったことをしているわけではなく、当たり前の動きのように見えますが、ひたすら的確でわかりやすい。今どこに注力すれば最も効果的なのかを見通し、考え尽くした動きなのだろうけれど、ある程度最初から本能的にわかって動いているのではないか?とも感じました。

指揮者に「天才」という形容は私としてはしっくりこないですが(その理由は長くなるので割愛)、天才、といわれるゆえんがわかった気がしました。才能はもとより経験が重要といわれるのが指揮者ですが、「天才に経験は不要」とも思ってしまったのでした。

そして、やはりそのルックス!
24金並みの濃色の金髪が美しい。細身で長身、指揮台の防護柵よりも脚が長い指揮者を初めて見ました(笑)。そして、座っているコンサートマスターと指揮台の上から握手できるリーチの長さ!長い腕は、指示のわかりやすさとともに見た目の華やかさという面でも有利ですね。

現在26歳。SNS上で同時期来日のブロムシュテット氏とのツーショットを見掛けましたが、その年齢差は約70歳。あの境地に達するまで見届けることはまず無理ですが、これからも追い続けていきたい才能です。

終演後に2度の「一般参賀」。総立ちスタンディング・オヴェイション。
その後ろで記念写真を撮る数人の奏者(笑)

◇座席
2階最前列中央。
”BRAVISSIMO”の横断幕を持っていけばよかったかと思うほどの、本当に「ど真ん中」の超良席で堪能しました。
ところどころ空席があり、客入りは8~9割程度。目立つ雑音はごくわずかの良き聴衆、快適な鑑賞。

◇アンコール
前述の通り、シベリウス「悲しきワルツ」。
実はこの曲、知らなかったのですが、シベリウスっぽいし、マケラ氏なのでシベリウスの可能性大だし、ワルツなので、「シベリウス ワルツ」で検索したら的中でした!(自慢)

◇その他
感動し過ぎると頭が疲れるという、これも初めての経験。
疲れた頭を癒すのと、そのまま電車に乗って帰り、買い物をし、夕食を準備し・・という日常雑事に戻るのが嫌だったのもあり、帰りにコーヒーショップでケーキセットを頼んでしまいました。そういえば、務川さんのラフ3を聴いた後も同じようにコーヒーショップで一服してから帰宅しましたっけ・・。

装丁も美しいB5サイズのプログラムが付けられていました。これも満足度高いです。
海外メジャーオケでは、A4ペラのみ、とか、それすらなくて2,000円で買え、とか、阿漕な公演が多いなか、これは破格のサービスに思えました。

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