2020年11月7日(土)鈴木優人プロデュース/BCJオペラシリーズVol.2 ヘンデル歌劇「リナルド」(有料配信)

自宅にて(本公演は11月3日 東京オペラシティ・コンサートホール)

一時期は東京に観に行こうかと本気で考えていた本公演。それが配信されるということで、初めて「有料配信」公演を鑑賞しました。

有名なソプラノのアリア「私を泣かせてください」
私も発表会で歌ってみたことがあるので(汗)、このオペラのだいたいのストーリーは知っていましたが、上演機会が少ないため鑑賞したことはありませんでした。なので、今回はぜひ観たい、と思ったのと、なにしろキャストが豪華。その上鈴木優人さんがチェンバロの弾き振り。現在日本で観られる最高のバロック・オペラであろうと思い、知ってすぐに配信チケットを購入しました。

実際の公演は11月3日でしたが、翌日から10日間のアーカイブ視聴も可能なので、その週の週末以降に自宅で鑑賞。好きな時、都合のいい時間帯に観られるのも嬉しいところです。

期待通り、いえ期待を大きく超えて、素晴らしいプロダクションでした。

やはり歌手が粒ぞろい。
カウンターテノールが3人も登場するのに最初は少々面食らいましたが、カウンターテノールにもそれぞれ声質の違いがあることがわかり、これも楽しめました。タイトルロール、リナルドの藤木大地さんは深みのある声で女声のアルトに最も近い感じ。久保法之さん(ゴッフレード)の透明感あふれる高音、青木洋也さん(エウスタツィオ)はあどけない少年のような声。その高音チーム?に対する敵方アルガンテ大西宇宙さん。この作品中唯一の低音バリトンが映えて素晴らしい。それになにしろ見た目がカッコいい!「ドン・ジョバンニ」も観てみたいな、などと妄想してしまいました。

そして、もう何といってもアルミレーナ森麻季さん。こんなに姿も声も美しい人がいていいのか、と思うほどでした。「私を泣かせてください」は、非常にゆったりとしたテンポ。このテンポで聴き手を惹きつけ、切々と歌い上げられる力量はさすがと言うほかありません。指揮者と距離が近いのもあるのか、オーケストラが実にぴったりと寄り添った演奏で、こちらの心にもぴったりと寄り添ってくれているような演奏でした。

ところで、このプロダクションで最大の発見(私が初めて知っただけですが)は、アルミーダの中江早希さん。敵役もコミカルにバッチリはまる演技巧者でもありますが、いや、このソプラノが素晴らしい!ものすごく心を捉える声質なのです。透明感、つややかさに加え、芯の強さと抜群の安定感。ずっと聴いていたくなる大変魅力的な声。バロック作品だからか、ヴィブラートを大きくかけていないのもあり、その分真っ直ぐ心に届くものがありました。演目や会場など場合にもよりますが、私はヴィブラートがかかりすぎる歌い方は、せっかくの透明感が損なわれるように感じてあまり好きではないのです。なので、彼女の歌唱は私の「ど真ん中」なのかな、と思った次第です。他の作品や合唱曲のソロでもぜひまた聴いてみたいと思いました。

このプロダクションは、本格的なオペラの舞台設定ではなく、オーケストラの前面に1段だけ高い舞台が設えてあり(敵、味方で左右半分ずつに色分けした市松模様の床がわかりやすくて面白い)、そこで歌手が演唱するというスタイル。

現代のゲームオタク少年(藤木さん)が、ゲーム中の「リナルド」の世界に入り込んでしまうという設定は、20年くらい前にそっくりの設定の演劇を観たこともあり、特に目新しさは感じませんでしたが、この公演での限られた舞台空間の説明になっているようで面白く感じました。藤木さんのみが現代人の扮装のままで、胸に「リナルド」を示す大きな「R」の文字がプリントされたシャツを着ていてーーこれ最初は某通販サイトのロゴかと思いましたーーでもそれが物語と違和感なく同居し、状況の説明になっているのもよくできているな、と思いました。

歌手の皆さんが本当にそれぞれ素晴らしかったのですが、しかし何と言ってもチェンバロを弾きながら指揮をする鈴木優人さんが恰好いい!その凛とした背中も重要なキャストのようで、舞台上の仮想世界と現実のオーケストラとをつなぐ役目として素晴らしい存在感だと思いました。まだ30代。今後のご活躍に目が離せないです。

・・アーカイブ配信終了まであと2日あるのですよ(笑)
今夜もこれからスマホで鑑賞しようと思っています。

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