2021年7月18日・25日(日)佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ「メリー・ウィドゥ」

14時開演 兵庫県立芸術文化センター 大ホール

2年ぶりに開催された芸文センターのプロデュースオペラは、2008年の再演でオペレッタ「メリー・ウィドゥ」。キャスト違いで2回鑑賞しました。

2回目の鑑賞から10日以上経ちますが、スカッと文章にまとめられない複雑な心境をまだ引きずっています。印象が両極端に分かれていて、このブログを始めてから最も記事として書きにくく、若干スランプに陥っていました(意味ないスランプですが 笑)。

本来のオペレッタに付加されたお笑い、タカラヅカ、ダンスにバレエの「てんこ盛り」大サービスのボリュームが多すぎてお腹いっぱい消化不良、辟易してしまった一方、音楽も舞台美術も衣装も豪華で美しく、それぞれのパフォーマンスは素晴らしく感動的だったので、感想をひとつにまとめられずにいるのです。

1回目の鑑賞では拒絶感の方が強かったのですが、その原因はずばり、狂言回し「ニエグシュ」役の桂文枝さんのキレのなさ。これは文枝さんが選ばれたこと自体がミスキャストであるとも思うのですが、動きには精彩がなく、セリフは聴きとりにくく、前口上では「ちゃんと説明できるのか?」と下手なプレゼンを見ているようなハラハラ感さえありました。

幕開けからこの乗り切れない感情を持ってしまったために、繰り出される笑いの要素をことごとく否定する気持ちで鑑賞してしまうことになったのですが、この役がテンポよく切り回してくれたなら、笑いとともにてんこ盛りのサービスをそのまま喜んで受け入れられたように思います。

といったことで、1回目はまぁなんともつまらない心境で帰途に着いたのですが、2回目はそうであってもせっかくなのだから楽しみましょう!と、頭を切り替えて難しいことは考えず、お腹も頭もカラッポにして臨んだので、かなり楽しむことができました。そういった意味で2回行って良かった、と思っています。

ここからは、歌手、音楽についての感想。
1回目、ダニロ役黒田祐貴さん。今回2回鑑賞したのは黒田さんを聴きたかったからなのですが、期待通りの美声。バリトンでもセリフ部分はテノール系の張りのある若い声。しかし、その容貌から、この方は悪役や苦悩する人物で観てみたいと思いました。ドン・ジョバンニ、スカルピア、エフゲニー・オネーギン、ヴォツェックなどなど。今後が楽しみです。

ハンナ役高野百合絵さん。美貌を備えたスター・ソプラノの誕生に立ち合えることを期待して行ったのですが、この日は高音の伸びが今一つ。「ヴィリアの歌」は難しいですね。
そして、この日の白眉は何といってもカミーユの小堀勇介さん!透き通る高音、特にビスでの歌唱が素晴らしかった。4階席から身を乗り出して大拍手!

2回目ベテラン組。しかし、楽日でかなりお疲れの様子で、ハンナ並河さん、カミーユ樋口さんは不調。最高音が全く届かない、途中で声が途切れる、といった事故レベル。それだけ体力も声帯も消耗するプロダクションだったのだと認識。佐渡さんが並河さんの呼吸に合わせながら丁寧に指揮されていたのが印象的でした。しかし会場は通常のオペラとは異なった盛り上がりで、これしきはまぁいっか!という雰囲気。オペレッタですから。うーん、でもやっぱりよくはないかな(笑)。ダニロ大山大輔さんは安定の演技と歌唱でした。

そして、両日通じてですが、登場人物の多いこの作品、清水華澄さん、大沼徹さん、ジョンハオさんなど日本を代表するオペラ歌手の方々が脇を固めていました。でもあくまで脇役で見せ場が少なく、それだけ贅沢なプロダクションとも言えますが、なんとも勿体ないこと!華澄さんはラインダンスまでされていて、それはそれでさすがでしたが(オペラ歌手は何でもできないと務まらないのですね)、その歌を聴きたい私としては少々残念でありました。

それにしても、このメリー・ウィドゥは美しい音楽で溢れていますね。冒頭序曲が流れ出した時にはあまりの美しさに涙が出そうでした。その古き良き時代を彷彿とさせる音楽にぴったりのレトロなデザインのクレジットタイトルがスクリーンに映し出された時には、「持って行かれたなぁ」と思いました。(その後の前口上で思いは崩れる・・)「メリー・ウィドゥのワルツ」、「ヴィリアの歌」、「女、女、女」・・今でも鼻歌で歌っています。

楽日は大入り満席で、観客は大盛り上がり。最後はスタンディング・オヴェイションで華やかに幕を閉じました。佐渡さんとこのホールにはやっぱりこの光景が似合います。

〈座席〉
1回目は最安席で4階上手側の最後尾。椅子に背中をつけて座ると舞台の半分が切れるのですが、誰にも迷惑でないので半身を乗り出して鑑賞。2回目は1階下手側奥の「雨宿り」でしたが視界は良好。ガサゴソが気になる席で、なんと上演中に喋っている声も聞こえたのですが「まぁいっか」(笑)

〈その他〉
カフェは閉鎖なので、夫が同伴の楽日はお茶とお菓子を持参し、幕間ホワイエの長椅子に陣取りピクニック気分で寛いでいたところ、音楽雑誌の取材を受けました。最初はありきたりの質問に答えていたのですが、そのうち次のような展開に。
「オペラにはよく来られますか?」→「はい。私ワーグナーなども好きなので」
「え、今、なんと仰いました?」→「ワーグナー、です」
「ワーグナー!?」→「いや、少し勉強して聴くと、あれほど面白いものはないです(後略)」
「それでは、ぜひ今度バイロイトに行ってみてください」

女子がワーグナー聴くのは変わってますかね?それにしても、こんなところでワーグナーを熱く語り始める私。変な奴!(笑)

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