2022年10月1日(土)サー・サイモン・ラトル指揮/ロンドン交響楽団 堺公演

16時開演 フェニーチェ堺 大ホール

笑わないでください(笑)。
この日の朝、急に思い立って「おかわり」してしまいました。

ブログには書かなかったのですが、実は、前日の公演は隣席が「イビキおじさん」。2,3回膝を叩いて起こしたものの、いつまたイビキをかきだすかと気になって意識の大半をそちらに奪われ演奏に集中できず、かなり腹立たしい思いがしたのです。(このところイビキ被害が続いています)

こういった負の感情は時間とともに沈殿していくもので、素晴らしい演奏の記憶はそれとはまた別のところに分離して残るものだ、ということは経験上分かっているのですが、しかし、この朝の時点では、せっかくのサイモン・ラトルがこのまま終わってしまうのは無念、という思いが強かったのです。で、・・そうだ、今日の公演に行けば「上書き」できるではないか?と思い立ったのでありました(笑)。

実は、前日の京都公演は客入りがあまりよくなく、パッと見の印象では6~7割程度(ブルックナーではなかなか人を呼べないのでしょうか)。なので、この日も完売ではないだろうと調べたところ、当日券がS,A,B席で発売されるとのことで、はい、意気揚々と出掛けました(採算度外視)。

結果としては大正解!
演奏が素晴らしかったのはいうまでもなく、終演後にマエストロのお人柄が感じられる出来事があり、それですっかり心は晴れやかになったのです。

カーテンコール時に、最前列の男性客がステージに向かって横断幕を掲げていたのですが、その後、返礼が終わったマエストロが進み出てその方と握手をしたのです。そして ひと言 “Bravissimo” と。そこでその方が横断幕を客席の方に向けたのですが、そこには “Bravissimo” と書かれていたのでした。皆拍手。

このマエストロの人間力、コミュニケーション力。
以前より、かつては「上意下達」の関係であった指揮者とオケは、現代にあっては「相互コミュニケーション」なのだな、と、まさに笑顔で指揮をするサイモン・ラトルその人の指揮を見ながら思っていたのですが、そのご本人のこういった言動を目の当たりにし、それだけでも来た価値があったと思いました。私の心は救われました。

ところで、すっかり後回しになりましたが、この日のプログラムは、ベルリオーズ「海賊」序曲と「ラ・ヴァルス」は前日と共通で、前半に武満徹のトロンボーン・ソロの作品が置かれ、後半はシベリウスの単一楽章の交響曲第7番とバルトーク「中国の不思議な役人」組曲。

正直なところ、十分に聴けたとは思っていません。元々知っていた作品ではなかった上に、何しろ急に行くことに決めたので、予習はSpotifyでダウンロードし行きの電車で聴いただけでした。

武満徹作品のトロンボーン・ソロは、首席奏者のピーター・ムーア氏。
この演奏は素晴らしかった。トロンボーンはこのような多彩な音色が出せるのだと——特に高音域の音の美しさを再認識。ミュートが2種類用意されていて、かなり頻繁に付け替えていたので、それも含めて暗譜するのは大変そうだ、とも思いました(笑)。

シベリウスもバルトークも聴いている時は没入していたのですが、今となっては、美しい響きの印象が残っているのみ。バルトークは「青ひげ公の城」によく似ているなぁ、とチラッと思った程度です。これはもう少し聴き込んでいればストーリーがつかめる音楽なので、残念ではありましたが仕方ありません。しかし、透明感のある美しい響きのアンサンブルは至福の音楽体験でありました。

この日もスタンディング・オヴェイション、一般参賀あり。

 

◇アンコール
フォーレ「パヴァーヌ」
マエストロが「フォーレのパヴァーヌを演奏します」と日本語で曲紹介。

◇座席
2階4列目下手側通路横。A席。

視界もよく、同列はガラ空き。よって快適に鑑賞できました。
ここのホールは今回が初めて。3階席が被る位置でしたが、響きは悪くなかったです。音響的には豊中文芸センターと似た印象で、モノによってはデッドに聴こえるのかもしれないと思いました。
しかし、舞台が狭い。コントラバスがかなり窮屈そうでした。ちなみにこの日は、1stヴァイオリン→2ndヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ、の配置。前日は「ブルックナー・フォーメーション」だったのでしょうか?
ちなみに、客入りは7~8割程度でした。

◇その他
この堺公演の協賛はDAKSの三共生興で、入口のところで、なんと入場者全員に「ハットピン」のプレゼントがありました(来てよかった!)。ロビーには大きなテディベアが飾ってありました。

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