2023年6月29日(木)アレクサンダー・ソディ指揮/読売日本交響楽団第35回大阪定期演奏会 ピアノ反田恭平

19時開演 フェスティバルホール

今年も読響大阪定期の会員になりました。

反田さん出演公演のチケットを労せずして手にできる、というのが会員になった理由のひとつ。この日は、今年生誕150年のラフマニノフ3番コンチェルトとチャイコフスキー交響曲第4番という、「ロシア王道プロ」での演奏会でした。

高校3年時に日本音楽コンクールでこのコンチェルトを弾き第1位を獲得した反田さん。それから10年以上を経た今、もうすっかり手の内に入っているの感で、「俺に任せとけ!」的な頼もしさ、貫禄すら感じる演奏でした。あらゆるピアノ作品の中で最も難しいとされるこのコンチェルトを、まったく難しさを感じさせずに弾き切る技量はやはり流石。特に低音部の音量には圧倒されました。なんともよく鳴るスタインウェイ。そうそう、体感したいのはこの迫力!

と、しかし‥。

残念ながら感動レベルには及ばず。
1月センチュリー定期のブラームス1番でも感じたことですが、ピアノの音の美しさが今ひとつ。
また、打鍵が上滑りで流れてしまっているのが気になり(そういう奏法を採ったのかも知れませんが)、それが冒頭であったがために、少々アラ探しの耳て聴いてしまいました。

このコンチェルトを生で聴くのが初めてであれば、ある程度は感動したのかもしれませんが——鳴らす音すべてが極上の響きで明瞭に聴こえてくる演奏や、大カデンツァを始め連続する和音をこれ以上ないキレの良さで響かせる演奏を聴いてしまったあとでは、どうしてもそれらと比較してしまい、心に迫ってくるものは少ない。こういう体験は演奏会に多く足を運ぶことによって生じる弊害かもしれません。

と、一旦この話は置いておき、後半のチャイコフスキー4番。
冒頭の悲痛なファンファーレからかなりテンポの速い演奏。読響はさすがに弦も管も上手いので、響きの美しさは申し分ないのですが、なんだか直線的で音圧が痛い。この演奏を聴いて、前半のコンチェルトが心に響いてこなかった理由はオケの演奏にもあったのかと思いました。感情を揺り動かす大きなうねりがない、というか・・。

とは言え、3楽章のピッツィカートはとてもチャーミングで、この作品の異なった魅力を発見。2ndヴァイオリン最前列の女性奏者が明らかに笑いながら(微笑ではなく)弾いていたのが印象的で、マエストロが顔で表情(変顔とか?)をつけていたのかもしれません。また4楽章の終盤、1楽章冒頭のファンファーレの再現部では、その持っていき方の上手さ——演奏にもチャイコフスキーの作曲技術にも——思わず唸りそうになってしまいました。

この4番は、オケ定期でも、いわゆる「名曲プログラム」でも採り上げられることが多く、「またか」との思いがあって近年聴くことは避けてきた作品のひとつで(昔は大好きでした笑)、今回久しぶりに実演に接したわけですが――冒頭ファンファーレの印象が強すぎるせいか、この作品で表現されているのは悲劇なのか栄光なのかよくわからないな、という感想も抱きました。

 

◇ソリスト・アンコール
グリーグ「トロルドハウゲンの婚礼の日」
このキャッチーでゴキゲンな曲は大好きで、時々弾いています(左手が回らない箇所があってコンプリートできていませんが)。夫もよく鼻歌で歌っており、演奏が始まったときは思わず「あ!」と隣の夫の方を向いてしまいました(笑)

◇座席
今期は2階2列目のほぼ中央。前列とは席が半分ずれているので、視界良好。

◇その他
会場で受け取ったチラシの中に、この合唱旅行のパンフレットが入っていました。

この手のツアーの内情はだいたいわかっているつもりですが、これは指揮者として進んでほしくない方向。反田さん、今のままではピアノも指揮も中途半端に終わってしまいますよ!と勝手に心配しています。

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