2023年10月4日(水)モーツァルト ピアノ協奏曲の旅〈ウィーン編〉Vol.1 井上道義指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団 ピアノ阪田知樹

19時開演 いずみホール

井上道義マエストロと大フィルがいずみホールで行っているモーツァルト・シリーズで、今回はソリストに阪田知樹さんを迎えたピアノ協奏曲を主体としたものでした。

もちろん(笑)阪田さんが目当てでチケットを取ったのですが、マエストロにかなり持って行かれた演奏会でした。

マエストロの意志が隅々まで行きわたった、生き生きとしたモーツァルト。
こんなに楽しく、幸せな気持ちでモーツァルトを聴いたのは初めてのような気がしました。そしてその美しさに涙ぐみそうになったりもして、ずっとニコニコうるうる状態での鑑賞でした。

必要なところだけに(多少大げさに)明快に指示を出し、音楽の方向性を浮かび上がらせるマエストロの指揮はまさに「至芸」。この日は休養明けから2回目の公演だったそうですが、その動きは以前のままで安堵(こちらの邪推かもしれませんが、少し無理をされているように見受けられるところも)。それにしても、来年12月で引退されるのはやはり非常に勿体ないし、クラシック音楽界の損失であるとも思っています。

阪田さんのピアノはやはり流石で、粒立ちがよく、さらさらと美しく、長い指のなんとよく回ること。そしてそれは指揮者(オケ)と丁々発止のやり取りというものではなく、室内楽的に演奏されているように感じました。

マエストロの強い個性、すべて意のままに操ろうとするが如くの指揮にピアニストも組み込まれ、あまり協奏曲的ではない演奏だとも感じ——そもそも当時モーツァルトは弾き振りで演奏していたわけで、ピアニスト自らがオーケストラを操り、音楽を作り上げる演奏が本来の形では?という気もしてきました。とはいえ、やはり素晴らしい演奏で、今もその余韻に浸っています。

1楽章後半の阪田さん自作のカデンツァは巧みで——冒頭にポリフォニー(バッハ)→ベートーヴェン風→ロマン派超絶技巧、と音楽の歴史を辿るような構成(私の推測ですが、恐らく当たっていると思います)。鍵盤を激しく上下する後半では、あぁこれをもっと聴きたい!と思ってしまいました。この願望は12月のリサイタルへ持ち越しです(笑)

◇アンコール
なし。マエストロが阪田さんに弾いて!というようなジェスチャーをされているように見えましたが、結局最後には後ろの奏者への配慮なのか、マエストロがピアノの屋根をたたんでお開きになりました(笑)

◇座席
N列下手側。
視界良好でピアニストの手元はよく見えたのですが、管楽器奏者が重なって見えづらい。
ここでオケを聴く際はもっと後ろがよいと思いました。

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