2023年10月7日(土)大野和士指揮/都響スペシャル ピアノ藤田真央

14時開演 サントリーホール

久し振りの東京でのコンサート観賞。

以前は年に1、2回は東京に出掛けていたのですが、コロナ禍で途絶え、出張も含め東京に行くこと自体も4年半振りでした。なのでこのブログを始めてからは初めてになります。

さてこのコンサート、言わずもがなで(笑)もちろん真央さんが目当てでした。

そして、それはもう素晴らしいものでした。
あまりにも美しすぎて、冒頭からずっとうるうると涙目での鑑賞。

ブラームスのこのコンチェルトは「重量級」で、力強く豊かな音量を誇るピアニスト向き、というイメージを持っていたのですが——こんなに詩情豊かでロマンティックな作品だったのかと、またしても真央さんによって作品の新たな魅力を差し出された格好です。

冒頭、ピアノの出だしの前にはオーケストラの方を向き、指揮者の如く音楽に没入する真央さん。いざピアノが始まると、その美音で奏でられる主題に、こんなに美しい音楽だったのかと感嘆。ここからフィナーレに至るまで、魅力発見の旅路でした。

通常轟音で弾かれる箇所も、一音一音がクリアに鳴るので、鍵盤をぶっ叩くような弾き方をしなくとも明確に聴こえ、十分に響いてくるのです。美音は轟音を凌ぐ。

単音が連続して走り抜ける部分のなんと魅惑的で爽快なこと。これには今月末に鑑賞予定のドヴォルザークのコンチェルトを思って期待に胸がキュンとしました。そして美音の白眉は2楽章アダージョ。打鍵技術とペダリング技術の双方による究極の丸く煌めく弱音。こんなに美しいものを聴いてしまっていいのだろうか、とさえ感じました。

これを聴くと、真央さんの演奏の全ては考え抜かれ、磨き抜かれた結果なのだということがよくわかります。にもかかわらず、自然体で弾いているように見えてしまうのも魅力なのですが。

アタッカで続く3楽章冒頭のキレのよさ。この古典的な様式を鮮やかに奏するリズム感の良さに、モーツァルトのソナタで感じた幸福感をも思い出しました。
最初から最後まで、その技術と音楽性に魅了され続けた幸せな時間でした。

オーケストラはかなり音量を抑えていたようで、最初耳にしたときはホールの音響に違和感を感じたほどでした。が、これは敢えて音量を落としていたのだと、後半ドヴォルザークとの音量差で気づきました。ピアノとオーケストラ双方の魅力を引き出す大野マエストロの指揮も素晴らしい。やはりこのホールの音響を熟知されているのでしょう。よく響くホールではピアノ独奏がオケに消されがちになるという懸念も杞憂に終わり、そんな心配をしていたことを申し訳なく感じました。

後半はドヴォルザークの交響曲第7番。
前半のコンチェルトは弦14型でしたが、この曲は16型で豊かな音量。
ブラームスを想起させる音楽ですが、時おりチャイコフスキーも感じたり。どちらにしても私の好きな音楽です(笑)

コンチェルトとともに「ニ短調」(これも好み笑)でしたが、終楽章は華やかにニ長調で終わる、優れたプログラムでした。

 

◇ソリスト・アンコール
グリーグ:抒情小曲第3集「愛の歌」op43-5
(ニ短調の平行調ヘ長調だったとのこと)

◇座席
1階20列上手側通路脇。
ピアニストはよく見えましたが、オケの後ろが見えにくい。
サントリーホールは2階が舞台から遠いような気がしてこの席にしたのですが、2階の方が良かったかも?

タイトルとURLをコピーしました