19時開演 ザ・シンフォニーホール
センチュリー今期初の定期演奏会。
(GW 11連休を満喫したため、投稿が遅くなってしまいました)
当初は秋山マエストロの予定でしたが、愛弟子の下野マエストロ代演での公演。
実は今期は定期会員を辞めたのですが、下野マエストロが目当てで足を運びましたが、大正解でした。
今期のセンチュリー定期はベートーヴェン・ツィクルスとなっており、全8回の演奏会で交響曲の1番から8番までを1曲ずつ、そして12月に第九を演奏する、という趣向。「8+1=9」でピッタリはまる、ナイス!です。
ということで、シーズン始まりの今回は第5番「運命」にフランス音楽を組み合わせたプログラム。
前半は、プーランクのバレエ組曲「牝鹿」とデュティユーのチェロ協奏曲「遥かなる遠い国へ」。
プーランク作品を多く知っている訳ではありませんが、とりあえず「グローリア」にそっくりな冒頭部分から既に掴まれます。軽妙洒脱、シニカル。一筋縄ではいかない和声。それにバレエ音楽ならではのリズム感が加わって、なんとも愉悦感に満ちた音楽。もちろん普通には終わらず、「一発かます」的なやや唐突な結びに「やっぱり(笑)」の感。(ドイツ音楽のように)終わりを殊更に強調するのは、フランス人的感覚からすると「お洒落でない」ということなのでしょうか。フランス映画(最近は全く観ていないですが)に通づるものも感じました。いいですね!プーランク。それにしても、盛り上がりとともに収束感を滲ませたマエストロの持っていき方の上手さ!音楽の行き先がわかる指揮は見て聴いて浸れるものがあります。
一方で、この楽しい音楽、舞台を見ると、オーケストラの方々は一様に超真面目な表情。もう少し曲に相応しい芝居気があれば、と思わないではなかったのですが——多くを望むべきではないのでしょう。
続く、デュティユーのチェロ協奏曲は、いわゆる「現代音楽」。特殊な奏法も多用された、恐らく高度な演奏技術が要求されると思われる作品。未知の領域に誘いこまれるような音楽で、知らない世界を俯瞰しているような不思議な気分にさせられる、「鑑賞する」というよりも「体験する」が近い感覚です。
もちろん予習もしていったのですが、録音とは音量バランスが異なるのか、作曲家が求めるもの(とこちらが感じていたもの)とは異なる音楽のように聴こえました。生で演奏する場合、バランスが取りにくい楽曲なのかもしれません。独奏チェロにもう少し音量が欲しいところでした。
と、前半はしっくりこない部分もありつつ——しかし、後半のベートーヴェンがとにかく素晴らしかった!
冒頭の「ジャジャジャジャーン」からして速すぎず遅すぎず「中庸」のテンポで腹落ち感。ここで既に「これはいい演奏になる!」と確信しました。
各楽器の奏でる旋律がくっきりと聞こえる超高解像度。スコアを眺めているかの如く、音楽の成り立ちが手にとるように理解できるのです。私の席(2階最前列中央)では、特に木管の響きが明瞭で、内声を奏でていたオーボエがソロに浮上する箇所など、ベートーヴェンの巧みさにハッとする発見も多数。その他ホルンを始め、管楽器の快調さに耳を奪われる演奏でもありました。
弦は、12-10-8-6-6 でコントラバスの低音が効いており、かつ、いつものセンチュリーのつややかな響きも堪能。心地よいアンサンブル。こういう聴き慣れた名曲中の名曲を巧みな演奏で聴く喜び、というのもコンサート通いの楽しみのひとつです。
下野マエストロの指揮を見ながら「名匠」という言葉が頭に浮かびました——お忙しいとは思いますが、センチュリーの指揮者になっていただけませんでしょうか(祈)
◇ソリストアンコール
カザルス:「鳥の歌」(無伴奏チェロ版)
デュティユー作品からの連続性も感じる優れた演奏。チェリストの本領をここで知ることができました。
◇その他
本編前に秋山マエストロへの献奏が行われました。モーツァルトのディヴェルティメントK.136より第2楽章。軽やかな音楽に救われる思い。マエストロはもう天国に旅立たれてしまったのだなぁとの感慨。
◇座席
2階最前列中央(以前の定期マイシートより2つ上手側)