2025年11月21日(金) シャルル・デュトワ指揮/大阪フィルハーモニー交響楽団第593回定期演奏会 ピアノ小菅優

19時開演 フェスティバルホール

2年振りでMo.デュトワの演奏を拝聴しました。

御年89歳。歩幅は大きく、腕の振りも大きく、腰を落とすような動作もごく自然で、30歳くらい年齢逆詐称していませんか?と問いたくなるほど。その壮健さには驚くばかり――いつまでもお元気で、素晴らしい音楽を届けてください!

プログラムは、前半にモーツァルトのピアノ協奏曲第22番、後半がラヴェルのバレエ音楽「ダフニスとクロエ」。

モーツァルトのピアノ協奏曲は23番がよく演奏されますが、22番は珍しい。もちろん生で聴くのは初めてで、ピアニスト小菅優さんを聴くのも初めてでした。

予習はしていたのですが――実際に最初の音を聴いた瞬間、「低い」と感じました。もちろんピッチが低いのではなく、音楽全体が。変ホ長調、モーツァルトがこの調性にしたのは、もちろん意味があってのことなのでしょうが、その音程ゆえ、華やかさに欠ける印象を持ってしまいました。

演奏も最初のうちは何だかガサガサしていて、本来はもっと闊達さと艶を備えた音楽なのではなかろうか?と思いながら聴いたのですが、小菅さんのピアノは細かな粒立ちも美しく、納得性の高いものでした。

1楽章終わりと3楽章に入るカデンツァは、リヒテルの依頼により1966年にブリテンが書いたもの。私の感覚としては、割と新しい(笑)。エンターテインメント的な現代性とともに、技巧性も高く、小菅さんのピアノを堪能できるものでした。

後半の「ダフニスとクロエ」。Mo.デュトワが初めて大フィルに登場した2019年にもこの作品を聴きましたが、その時は「第2組曲」だったので、全曲聴くのはこれが初めてでした。

オーケストラの編成が大きく、特にパーカッション類が多彩なのですが、なんといっても合唱。歌詞のない歌唱で、人間の声を楽器の一つとして使っているのですが、その和声感、色彩感、浮遊感――ラヴェル天才!

マエストロの巧みな制御で、オーケストラから放たれる輝きと官能性。特にコーダの盛り上がりはこれ以上ないと思われる豊麗さ。マエストロに感謝。

一方で――この音楽は「バレエ音楽」であって、音楽そのもので何かを伝えるものではない、というのも感じたところです。主体が音楽でない、つまり劇伴音楽だな、と。なんだか具のない味噌汁、もといブイヤベース?みたいだなー、と。様々な妙味が滲み出て混ざり合い、美味ではあるけれど食する本体がない、みたいな。つまりは「食い足りない」ということなのですがーー美しいので聴いてはいられるのだけれど、聴き続けるにはちょっと長い。「第2組曲」の存在に納得。

と、またいいこと書かなかったような?
いえ、これは作品のせいであって、演奏自体は素晴らしいものでした。

◇ソリスト・アンコール
ショパン:エチュードop.25-1「エオリアン・ハープ」

◇座席
2階6列目下手側。
最安席のさらに2割引きで文句は言えないのですが――斜め前はお子様(かなり頑張っていたけれどタイクツするよね)、斜め後ろからはジイサマのイビキ、空席2つおいた隣の若者は爆音拍手(鼓膜破れそう)、となかなかの環境でございました。

◇その他 休憩時間にロビーで沼尻マエストロを目撃。今関西におられるので聴きに来られていたのですね。2日後はマーラー9番(お声掛けしたいのをぐっとこらえる笑)。

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